
「だが、おれのやりくちは、そんなんじゃねえぞ。おれはそっくり貯めこむんだ。あやしまれるといけねえから、あっちにすこし、こっちにすこしってぐあいに、一か所にあんまりたくさんおいとかねえようにしとくんだ。おれはもう50だよ、いいか。だから、この航海からもどったら、まっとうな紳士になるつもりだ。」
『宝島』より ロバート・ルイス・スティーブンソン 著/坂井晴彦 訳/福音館文庫
ニコラス・シャクソンの『タックスヘイブンの闇』の原題は『Treasure Islands: Tax Havens and the Men who Stole the World』で、スティーブンソンの『宝島』(Treasure Islands)からとったものなのです。
⇒Treasure Islands: Tax Havens and the Men who Stole the World
★2012年2月16日のメール
『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』
ニコラス・シャクソン 著/藤井清美 訳
定価:2625円(税込)
発売日:2012年2月7日 四六判上製 448ページ
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=13465
まだ読みはじめですが、フランスエリートの租税回避地であり90年代に政財界を揺るがした「エルフ事件」で脚光を浴びたガボンの首都リーブルヴィルの怪しげなエージェントとの交流から話が始まっています。ジョン・ル・カレの小説の書き出しのような感じです。サルコジが2007年に最初に大統領に当選して、一番最初に電話をした外国の首脳がガボンのオマール・ボンゴ大統領だということなども紹介されています(このボンゴ大統領官邸は、仏軍空挺部隊200人が駐留する基地と地下でつながっているそうです)。
本書でシャクソンさんは、タックスヘイブンとは単に租税の回避地というだけではなく、「人や組織が他の法域(≒主権国家)の規則・法律・規制を回避するのに役立つ政治的に安定した仕組みを提供することによって、ビジネスを誘致しようとする場所」と正確に語っています。そしてこのようなサービスを提供する国、市場、金融機関の総称である「オフショア・システム」こそが問題である、と指摘しています。
「オフショアはリーブルヴィルとパリを、ルアンダとモスクワを、キプロスとロンドンを、ウォール街とメキシコシティやケイマン諸島を、ワシントンとリヤドを結び付けている。犯罪の地下世界と金融エリートたちを、外交・情報機関と多国籍企業をつないでいる。紛争を促進し、われわれの認識を形作り、金融の不安定さを生み出し、大物たちに莫大な報酬をもたらしている。オフショアは、権力の世界が現在どのように動いているかを示す縮図である。」(同書16頁)
東京と香港、マニラ、シンガポールをはじめ世界各国のタックスヘイブンとの間にも、このようなオフショア・システムが張り巡らされています。
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