『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』をめぐって(1)


▲オフショア金融とタックスヘイブン:Democracy Now !より


『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』が話題になっています。

『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』
 ニコラス・シャクソン 著/藤井清美 訳
 定価:2625円(税込)
 発売日:2012年2月7日 四六判上製 448ページ
 http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=13465


『タックスヘイブンの闇』は、租税回避だけでなく、多国籍企業、ロビイスト、政治家、ウォール街、シティ等など、資本の自由を追求しようとする新自由主義グローバリゼーションの問題として、タックスヘイブンの問題を描き出している秀作です。

リーマンショック以降、G20サミットで取り上げられたタックスヘイブン対策の欺瞞についてもしっかりと言及されています。このブログでも2009年以降、欧州attacの訴えなどを中心に紹介してきたのですが、『タックスヘイブンの闇』でも同じ内容が取り上げられており、非常に心強く感じたところです。

敵は本能寺にあり---『タックスヘイブン』お薦めデス
2007/06/27
Le Tour de France des paradis fiscaux!:G20ではタックスヘイブンの規制はできない
2009/09/03(木)
G20にタックスヘイブンの規制ができるのか? いや怪しいものだ!
2009/09/24(木) 20:29:46
タックスヘイブンは消滅途上? いや、ますます怪しいものだ!:G20ピッツバーグサミットが終わって
2009/11/18(水)

本当はまとまった論評などが紹介できればいいのですが、時間がないので、結構前からになりますが、attac首都圏の会員ML等に投稿した関連メールを何度かに分けて掲載します。冒頭に埋め込んだデモクラシーナウの番組もぜひご覧あれ!


★2009年9月23日のメール

「ピッツバーグG20:タックスヘイブンは消滅途上? いや、怪しいものだ」の紹介、ありがとうございました!

attacフランスがOECDモデル租税条約に対して疑問を持っているということに、心強い思いがしています。

モデル租税条約には、現在、OECDのモデル租税条約と国連のモデル租税条約の二つがあります。両者を比較すると、OECDモデルは資本輸出国の立場を尊重し、国連モデルは投資受入れ国(=途上国が多い)の立場を尊重する傾向がある、といわれています。

(参考)租税条約の概要と我が国の締結の動向(財務省広報誌「ファイナンス」2009年2月号)
http://www.mof.go.jp/finance/f2102e.pdf

G20やOECDなどは、タックスヘイブンが「協力的」になって、租税条約を締結しつつあることを評価して、ブラックリストからタックスヘイブンをはずしつつあるのですが、そこでいわれている「協力」とは、恐らくOECDが2002に制定した「情報交換に関するモデル協定」に定められている情報提供のことだとおもいますが、この「情報交換に関するモデル協定」では税情報の自動交換という、attacフランス等が要求する事柄がすっぽりと抜け落ちています。

OECDモデル租税条約の26条では、税情報の交換を幅広く規定していますが、その形態や方法については限定をしていないことから、情報交換に関するモデル協定をつくり、そこで情報交換の形態や方法を提示しています。

OECD租税委員会による「税目的の情報交換マニュアル」によると、

「(OECDモデル租税条約の)第26条は幅広く情報交換を規定しており、情報交換の形態や方法を限定してはいない。情報交換の主要な形態は、要請に基づく情報交換、自動的情報交換、および自発的情報交換である。(2002年の情報交換に関する)モデル協定は、自動的および自発的交換の可能性を含めることによって協力を拡大することで締約国が合意することは可能だが、要請に基づく情報交換にのみ適用される。 」

ということで、税情報は一方の締約国の要請がなければ情報を明らかにする必要がない、ということになっています。結局、その時々の執政者の利害関係によってしか租税回避に関する情報が開示されない危険性が高い、ということです。ATTACフランスなどは、これを問題視し、情報は自動的に明らかにされるように、と要求しているようです。

(参考)OECD租税委員会による「税目的の情報交換マニュアル」の承認について(2006年5月国税庁ホームページ)
http://www.nta.go.jp/sonota/kokusai/oecd/press/06.htm

9月5日に開かれたG20財務相・中央銀総裁会合で提出された「ロンドンサミット・ワシントンサミット行動計画の進捗表(英文)」では、タックスヘイブンへの取り組みに対して、「前例のない大きな進歩があった」として、70以上もの租税情報交換条約が締結された、と自画自賛をしています。しかし先に見たとおり、投機マネーにとっては規制にもならない情報交換の条約でしかありません。

(参考)ロンドンサミット・ワシントンサミット行動計画の進捗表(英文)
http://www.mof.go.jp/english/if/g20_090905_3.pdf

ロイターの報道によると、G20サミットを翌日に控えた23日、イギリスのダーリング財務省は、「G20がすでに租
税回避地(タックスヘイブン)の問題に対応したことから、今後は規制の緩いオフショア市場が金融システムのリスクにならないかに関心が集まるとの認識も示した。」とあるように、世界最大のタックスヘイブンであるイギリスの財務大臣がすでにタックスヘイブンへの問題には対応したと、ヘナヘナな認識をしていることがわかります。attacフランスの報告とは、すごい開きがあります。

(参考)経常黒字国、内需喚起の必要性を認識=英財務相(ロイター2009年9月24日)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11626220090924
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