
EUでは金融取引税導入に向けて動きが活発になっているようです。
国際連帯税を推進する市民の会(ASIST)のウェブサイトでは詳しい情報が提供されていて勉強になります。
◎2012年3月二つの欧州財務大臣会合と金融取引税を巡る動向(国際連帯税を推進する市民の会)
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この間ずっと考えてきて、時間がないので情報やデータのまとめが出来ていませんが、金融取引税ってむかし日本で導入されていたという有価証券取引税&取引所税と同じじゃないの、と。
・欧州委員会の提案
株・債券取引:0.1%
デリバティブ取引:0.01%
・日本の有価証券取引税の税率
株券等:証券会社0.12%、投資家0.30%*
*1996年以降0.21%に引き下げ
転換社債等:同0.06%、同0.16%
公社債券等:同0.01%、同0.03%
・日本の取引所税の税率
先物:0.001%
オプション取引:0.01%
・・・ね?
日本では有価証券取引税は1954年から、取引所税は1950年から導入されており、どちらも1999年4月1日をもって廃止になりました。
税額は、有価証券取引税は1988年の約2兆1000億円、取引所税は1987年の約466億円と、バブルのときに最高額を記録し、累計で有価証券取引税が13兆7500億円、取引所税が7300億。
(参考)国税局 長期時系列データ
これを復活させる、というのでいいんじゃない?と思うんだけど。取引所税の対称をデリバディブ取引全般に広げるという改善なども必要でしょうが。
航空税をはじめいろんな税金が、かつての日本でもありました。上に紹介した国税局の長期時系列データの「その他」をクリックするとエクセルファイルが開きます。旧税関係のところには「通行税」(まさにロビンフッド税です)とか、入場税、航空機税、トランプ類税、そして富裕税もあります。面白いですね。
これらに比べて、通貨取引そのものに課税するというトービン税のアイデアはやっぱりたいしたものだ、と思います。世界を破壊する元凶のひとつである無政府的な通貨取引全体に対して課税し、そしてこれまでの主要な被害の対象である南の国々の人々のエンパワーメントとして活用するのですから。
しかし今般の金融危機には間に合いませんでした。そして今般の金融危機を通じて、トービン税などの規制対策だけでなく、「大きすぎてつぶせない」私的金融機関というシステムそのものを作り変えなければ、今後の経済危機はさらに大規模かつグローバルなものになるのではないか、と思います。
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・・・ということで(?)本題。
金融取引税にまつわる神話のベールを引っ剥がすためにでしょうか、「Financial Transaction Tax:Myth – Busting」というレポートがattacオーストリアのサイトに掲載されています。2012年3月に発表されたもののようです。「金融取引税:神話の崩壊」とでも訳せばいいのでしょうかね。
◎Financial Transaction Tax:Myth – Busting(2012年3月、英語、PDFファイル)
レポートは、たとえば「金融取引税はグローバルに導入されなければならない」とか「簡単に租税回避されて効果がない」とか「費用は最終消費者が負担することになる」とか「いや年金受給者が負担することになる」とか、金融取引税にまつわる「12の神話」についての「ウソとマコト」が述べられています。
これについてはattacフランス作成の「金融取引税:よくある質問とそれに対する回答」(日本語)にほとんど書かれてあることではないかと思うのですが、もう少し最近の状況に引き寄せて執筆されているのかもしれません。
英語が読めないのでなんともいえませんが、そんな僕でも分かるように「12の神話」のレポートの9ページ目には、金融取引税の導入状況が世界地図で示されています。ブルーがかつて金融取引税が導入されていた国、グリーンが現在導入されている国で税収10億ドル未満、オレンジが税収10億ドル以上の国です。
日本もブルーで塗られています。 1980年代で120億ドルの税収、税率は株式0.1~0.3%、社債0.08~0.16%、1999年まで導入されていた、とあります。税率については先に紹介した有価証券取引税の数字と大体おなじ(あたりまえですね)。取引所税については触れられていないようです。
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もうひとつ気になっていることは、EU委員会の金融取引税がひどい緊縮財政(=労働者収奪)と平行して提起されていることです。
サルコジ提案の金融取引税の問題については、いくつかの声明を翻訳してもらって、そのでたらめが明らかにされています。
◎内容は貧弱~サルコジの金融取引税に関するATTACオーストリアのコメント(日本語)
◎フランス式トービン税:下劣なハッタリ(日本語)
そしてEU委員会による金融取引税についても同じようにatttcオーストリアやattacドイツなどは、EUの財政協定が新自由主義そのものであり受け入れ難く、金融取引税の導入と引き換えに新財政協定を承認すべきではない、と批判しています。
◎EUの財政協定は社会的権利と民主主義の原則を破壊する:attacオーストリア3月19日(ドイツ語)
◎ドイツ社民党と緑の党は金融取引税の導入の引き換えに新財政協定を受け入れるべきではない(ドイツ語)
ドイツのショイブレ財務相が欧州財務大臣会合で金融取引税の段階導入を提案したことにについては「議論を進める契機となった」と評価するものの、引き換えに新自由主義の新財政案を受け入れることには賛成できない、という真っ当な主張です。
アタックフランスは、サルコジ提案の金融取引税が、世界の貧困を削減することには使われず財政再建のためだけに徴収されるものであり、ましてや金融市場を規制することなどはできない、と批判している(ようです)。
◎「歯車に砂粒」ではなく「大海に砂粒」:サルコジ式トービン税(フランス語)
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