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国際協調か国際連帯か~6カ国・地域の中央銀行による米ドル供給と各紙社説

capitalism is crisis

11月30日、日本時間の夜11時に発表された日・米・カナダ・EU・スイス・英国の6つの中央銀行による金融市場へのドル供給協調策それ自体の意味というのは分析しないといけないのだが、時間がないので、とりあえず思ったことだけを記録しておこう。

12/1の日経新聞朝刊には「ポジティブ・サプライズ」だという市場関係者のコメントがあった。

そうか?こんなことは2008年9月からこれまで継続して行われてきたことだし、今回は貸出金利を引き下げて借りやすくしただけじゃないか、と思う。「ポジティブ」でも「サプライズ」でもないじゃないか。


もうひとつ。各紙社説について。ウェブで12月2日付けの朝日、毎日、東京、読売、日経の社説をみてみた。

いちばんアホ丸だしな社説は「欧州危機―思い切った金融緩和を」という見出しをつけている朝日新聞か。

欧州危機―思い切った金融緩和を(朝日)

「まずは欧州中央銀行(ECB)が国債の購入を拡大すべきだ。金利も大幅に引き下げ、大胆な金融緩和に踏み込む必要がある」と叫んでいる。まるで銀行の代弁者だ。見事としか言いようのないネオリベ振りだ。

朝日社説はECBによる国債購入に反対するドイツに対しても懇願している。
「インフレを招くとして国債購入に反対しているドイツは、ここから『君子豹変(ひょうへん)』してほしい。」

この「ドイツ問題」を前面に押し出したのが毎日新聞の社説「ユーロ危機対策 ドイツが決断する時だ」。

ユーロ危機対策 ドイツが決断する時だ(毎日)

毎日の社説は、朝日社説にみられる「ECB国債購入」を批判するドイツ政府の主張を支持している。一方で、ドイツが拒否し続けているユーロ共同債導入を強く押している。

「抜本策は、ユーロ加盟国が連帯して責任を負う共同債の導入抜きに考えにくいが、ドイツがかたくなに拒否の姿勢を続けている。……もう先送りは許されない。ユーロ共同債導入を含む財政統合でメルケル首相が決断する時だ。」

賃金据え置きで等ユーロ圏内での競争力を維持しつつユーロ周縁国に不当な債務を押し付けてきたドイツの思惑はあるだろうが、この「ユーロ共同債」というのも果たして積極的に支持すべきなのかは疑問だ。

attacオーストリアは、ブレーキのないユーロ共同債は大変危険であり、それよりも、ECBが各国の国債を保証したほうがいい、保証に必要な費用は大企業・大金持ちに対する資産課税によってまかなうことと訴えている。資産か減れば負債も減るよ、ということか。

ユーロ債よりECBによる保証を~ただし最大限の資産課税の上での話だ(attacオーストリア 2011/11/24:ドイツ語)

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「日米欧資金供給 対症療法だけでは不十分だ」という社説の読売と、「中央銀ドル協調 抜本解決にはならない」という東京新聞はオーソドックスか。

日米欧資金供給 対症療法だけでは不十分だ(読売)

中央銀ドル協調 抜本解決にはならない(東京)

東京新聞は社説の最後に「欧州は重債務国の一時的なユーロ離脱のような抜本策も除外せず、あらゆる方策を視野に入れる局面ではないか。」とのべ、他紙との違いを出してはいるが、果たしてこれが「抜本策」かどうか、大いに疑問だ。

というのも欧州をはじめ世界各国の財政危機は、民間金融機関による無茶な貸付が原因だからだ。それがソブリン問題に発展しているのは、そんな無茶な貸付で膨らんだ民間の不良債権を国がさまざまな公的資金で救済しているからだ。そしてそのツケが、年金や医療支出の削減や公務員の首切り・非正規化など、公共サービスの切捨てという形で、何の責任もない庶民に襲い掛かっている。

その辺もわかってか、あるいはもう少し事情に詳しいからなのか、さすがと言おうか何と言おうか、「応急措置だけで欧州危機は克服できない」というこれまたオーソドックスなタイトルをつけた社説を掲載した日経新聞は、他紙社説ではまったく触れられていない「金融機関の自主的な債権カット」を提言している。

応急措置だけで欧州危機は克服できない(日経)

ただしこれも注意が必要だろう。あくまで「自主的」な債権カットなのだ。だが債務帳消しを訴える社会運動が求めているのは、市民に開かれた債務監査であり、またそれによって明らかにされた「不当な債務」は支払う必要がないという「強制的」な債権カットの方法なのだ。債権カットだけでなく、これまで金融機関が行ってきた「自主的」な取り組み(BIS規制に定められた内部格付け、監査、規制など)では、金融危機を防ぐことはできなかったし、逆に危機を拡大してきた。

日経新聞の社説はもちろん「自主的な債権カット」だけを提言しているわけではない。それとともに、「ギリシャが公約した緊縮財政の確実な履行を促す」「イタリアもIMFの監視下で財政再建に全力を挙げるべき」という、紹介したすべての社説が掲げる方策を主張している。

各社社説に共通するのは、今回の措置は「応急措置」であり「更なる構造改革」が必要であると叫んでいる。この共通認識は、日銀の白川総裁も共有している。白川氏は11月30日の夜11時からの記者会見でこう語っている。

「この欧州のソブリン問題は、流動性の対策だけで解決する問題ではありません。流動性の供給策は、あくまでも時間を買うという政策であり、時間を買っている間に、経済・財政の構造改革に取り組むということがないと、問題は解決しません。」(記者会見PDFファイル

「時間を買う」を正確に言えば「未来を食いつぶしている」ということだ。

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金融機関のマネーゲームのツケを庶民に押し付け「未来を食いつぶす」緊縮財政に反対して、危機に揺れる国のひとつポルトガルでは11月24日からゼネストが闘われた。

ポルトガルでゼネスト、財政緊縮策に抗議(日テレNews24)

この国会議事堂前での集会にはattacポルトガルの姿も確認できる。がんばれー!


attacポルトガルのウェブサイトでもこのゼネストへの支持を表明し、参加を呼びかけている。

fotografia.jpg
「金持ちに課税し、人々にばらまけ!」ゼネスト支援ポスター

街頭で配布するパンフレットもPDFで公開されている。(どこかの国のハシズムによって強制される旗のようですが「太陽の国」ポルトガルに免じて、その辺はスルーしてください…)

ウェブサイトでは、「危機に対する五つの緊急提案」てな感じの文章も発表されている。

そこでは

1.金持ちに課税して人々にばらまけ
2.雇用のために銀行にではなく直接融資を!そのために銀行の国家管理を!
3.公的債務の監査を!
4.EU委員会やECBから民主主義を取り戻せ!
5.未来を占領せよ!

ということが謳われている(ようだ)。

EU内部の金融資本の駆け引きによる更なる収奪に抗するために、ポルトガル、ドイツ、フランスのattacは、市民の債務監査と国際連帯を強化する共同のコミュニケを発している。

ATTACドイツ、フランス、ポルトガルは変革のために力を合わせる(2011/11/28 ATTACポルトガル、ポルトガル語)

国際協調の金融緩和ではなく、国際連帯の金融規制という、もうひとつの道は可能である。
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