不当な債務を帳消しにグローバルアクションウィークに寄せて(1)

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毎年10月中旬にワシントンで行われるIMF世銀総会にあわせて、不当な債務の帳消しを訴える世界の団体がアクションウィークを呼びかけています。今年も10月8日から16日の間にさまざまな活動をつうじて不当な債務問題をクローズアップさせるためのアクションウィーク「Week of Global Action Against Debt and IFIs 2011」が呼びかけられています。

不当な債務は「南」の諸国だけでなく、ギリシャやアイルランドの危機を発端に、EU全体を揺るがすまでになっています。不当な債務の帳消し情報を掲載するフリーペーパー「でっとばい」では、ギリシャ、アイルランド、そして南北世界の債務の解説「世界債務レポート2011」が掲載されています。ぜひダウンロードしてお読みください。

「でっとばい」4号 欧州危機(ギリシャ、ハンガリー)
「でっとばい」5号 続・欧州危機(アイルランド)
世界債務レポート2011

10月8日からはじまるアクションウィーク、そして「我々は銀行家と政治家の商品ではない!」をスローガンに「ウォール街を占拠せよ」と呼びかけるNYの若者たちに連帯をこめて、昨年の9月にアジアアフリカ連帯という団体の秋季研究会での講演録を何度かに分けて掲載します。おもに投機マネーと南の諸国の債務について話したものです。※「ウォール街を占拠せよ」はデモクラシーナウジャパンの皆さんががんばって追っています。感謝。


第三世界の債務危機とオルタナティブ

2010年9月25日のAA秋季研究会報告にて
※文中のデータは「債務・貧困・格差データ2009」等を使わせていただきました。感謝。


ATTACとは

 ATTAC(Association for the Taxation of financial Transactions for the Aid of
Citizens=市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション)は、1998年6月にフランスで結成されました。

 その前年に起きたアジア通貨危機に直面したヨーロッパの市民団体は、フランスの月刊紙『ルモンド・ディプロマティーク』の社説「金融市場を非武装化せよ」が掲げた、世界中の経済や労働環境を破壊する投機マネーはしっかりと規制すべきという主張に呼応し、フランスでは約1万人の人たちが結成にかかわり、その後はドイツや南ヨーロッパ諸国にATTACのネットワークが拡がり、2001年にはATTACjapnが結成されました。

 2001年、様々な世界の国々の労働組合や社会団体、NGO(非政府組織)が年に一度、先進国以外の国に集まって今の世界の在り方を変えるために話し合う「世界社会フォーラム」がATTACフランスなどかかわる形で始まりましたが、その当時はあまり意識されなかった投機マネーが大きな問題となり、ATTACの主張が認められるようになりました。

 ATTACは、世界で暴れまわったあげくに通貨暴落を引き起こして人々を貧しくする投機マネーを規制するために「トービン税」の導入を主張していますが、「トービン税」はノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・トービン博士が、1972年に短期の金融取引に課税することで為替を安定させて国家の財政政策を安定させることを目的に提唱したもので、当時は関心を持たれませんでした。

 しかし、為替取引の自由化が進み、大きくなった投機マネーが世界中を破壊するようになり、トービン博士の主張が運動の中で復活してきました。

 ATTACは結成以来、①一つ一つの通貨取引にごく小率(0,01%)の税をかけることで、利益を求めるために何百、何千回の取引を繰り返す投機マネーを規制し、②集まった税収を金融自由化によって被害を受ける南の諸国の貧困削減や公共サービスの強化に活用することを提唱しています。

 ただ、資金管理の方法や南の国々には様々な社会・政治体制があるために税収の有効な活用方法はまだ確立されていませんが、少なくとも南の国々に貧困を強いる北の国々の責任を明確にしたうえで、国際的枠組みを作り、南の国々の人々と共に考えていくことで様々な知恵を出すことは可能ですし、世の中の仕組みを変える有効な手段の一つとなると考えて良いと思います。

膨張する投機マネー

 2006年一年間の世界の貿易総額は11兆8742億ドルでしたが、07年4月の1日当たりの通貨取引額は5兆3000億ドルで、わずか三日間の通貨取引で一年の貿易総額を上回ってしまいます。

 外貨取引には投資や貿易決済等も含まれますが、約9割はそれとは関係がない投機で、その割合はどんどん増え、投機マネーが世界を駆けまわりバブルを生み出し破裂させた結果として1997年にアジア通貨危機、2001年にアメリカの投資ファンドLTCM危機、そして08年には「百年に一度」と言われた世界金融恐慌が引き起こされましたが、危機の度にその規模は大きくなり、IMF(世界通貨基金)の調べではアジア通貨危機では4100億ドルだった損失額は、08年の金融恐慌では2兆2760億ドルとなっています。

 「南」の国々では1980年代から100回以上の金融・債務危機が発生しましたが、現在では金融資本主義の中心であるアメリカが誰にも手のつけられない状態となり、日米欧は史上最大の公的資金を注入して危機を先延ばしにしています。

 『日経新聞』は7月10日の記事で「需要不足」と言っていますが、私には無駄なお金が世界を駆けまわっているとしか思えませんし、それは供給過剰といえます。必要のないお金をしっかりと規制して縮小させて必要な経済規模にした上で、様々な形で違う社会づくりを目指す「南」の国の人々に必要なお金をまわすために、「北」の国の運動と共に作っていくことを考えなければいけません。

富の収奪による世界の貧困

 9月23日、世界の貧困の半減を目指す国連ミレニアム開発目標サミットで菅直人首相は途上国向けに保健・教育分野で総額85億ドルの支援を表明しましたが、日本のODA(政府開発援助)予算は6187億円で、1997年のピーク時から半減しています。

 2008年度の政府の途上国向けに対する政府の貸し付けは70億5081万ドルですが、回収額は79億5050万ドルで差し引き9億ドルの資金が南から北へ逆流しています。無償資金協力の47億8000万ドルのうちの28億ドルは過去の円借款の債務帳消しにあてられているので、実際には20億ドルの支援しかしていません。

 1970年代に700億ドルだった第三世界の債務残高は2007年には3兆3600億ドルになり、1980年代から2007年まで第三世界諸国は70年代の102倍に当たる7兆1500億ドルを返済したにもかかわらず、債務は48倍になっています。

 1985年から2007年の融資額から返済額を引いた合計、つまり「南」から「北」への資金移転は7590億ドルで、戦後欧州復興のために行われたマーシャルプランが1000億ドルですから、その7倍以上の資金が「北」に流れて繁栄を支えてきました。

 このような富の収奪により世界の貧困は拡大し、世界の最も豊かな500人の収入はもっとも貧しい4億1600万人の収入を上回り、2005年には1日1ドルで生活する人は14億人、08年には飢餓人口が9億6300万人、小学校に通えない子供は1億人、妊娠出産で死亡する女性は年間50万人、衛生的な水を得られない人は11億人となりました。

 「南」の人々の生活はますます悪くなり、1981年には一日1ドル以下で生活する人々はサブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)で2億1400万人でしたが、90年は2億9900万人、2004年には3億9100万人となり、同時期にラテンアメリカでは4200万人、4300万人、4600万人、南アジアでも5億4800万人、5億7900万人、5億9600万人と増える一方です。

 その理由は、債務返済が優先されているために表1のように「南」の国々では人々の生活を支える社会サービスにお金を出せないからで、債務返済のために借りたお金が新たな債務となって人々の生活を圧迫しています。

(つづく)
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