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attacのアイデアの勝利~G7を前に欧州で金融取引税を巡る発言あいつぐ

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今日(9/1)の日経新聞の朝刊に、9月9日から10日に仏・マルセイユで開かれるG7に関連して「仏独では急激な資本指導を抑制すべきだとの考えも根強い。両国は金融取引に課税してマネーの移動を抑え、税収を緊急時の市場安定に使う構想を検討しており、議題に上る可能性がある。」という記事があった。


◎attacのアイデアの勝利

8月16日に行われた仏独首脳会談の終了後、仏サルコジ大統領と独メルケル首相はユーロ圏17カ国の統合強化に向けた方策を発表し、その中には金融機関に対する金融取引課税も盛り込まれていた。その後、金融取引税の導入を巡る発言が相次いでいる。

各国政府レベルでは、その効果に疑問を呈する声はほとんど聞かれなくなった。せいぜい「世界的に導入しなければ効果がない」というものである。最近の発言を書き出してみよう。

・アイルランドのヌーナン財務相:「ユーロ圏の17加盟国だけでなく、EU加盟の27カ国で導入する必要がある」「アイルランドで金融取引税が導入されているにもかかわらず、英国では導入されていないという状況にはすべきでない」(8月17日)

・フランスのバロワン経済相:8月23日にドイツのショイブレ財務相と会談。「われわれは9月にEUに案を提示する考えだ。提案は秋に議論されるだろう。11月のG20で何としても結果を得たい」。(8月28日)

・欧州委員会のバローゾ委員長:「(11月の)カンヌ・サミットを前に欧州金融取引税の提案を発表し、G20レベルでもさらに推し進める決意だ」(8月31日)

・欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁:金融取引税は世界全体で実施されなければ機能しない。

8月31日、サルコジ大統領はパリ駐在の各国大使に対して、「有形財を購入する際に税金を支払うのは当然だ。金融取引だけが税金を免れる理由があるだろうか」と発言している。

10年以上に及ぶattacの主張が、かなり歪められてはいるが、政治の世界では無視することができなくなったといえる。ユーロ圏とそれ以外のEU加盟国との間の駆け引きや、あれこれと「できない理由」を並べるのはもうたくさんだ。

attacフランスattacスウェーデンは、金融取引税というattacのアイデアの勝利だと述べる一方で、投機を規制しない緩やかな税率では意味がなく、金融機関の救済や財政危機、成長分野への投資のみに税収が使われてしまってはならないと警告を発している。

タックスヘイブンの閉鎖、法人税・所得税の累進性の強化、大きすぎて潰せない金融機関の無償国有化と民主的管理とともに、福祉、医療、水、教育、公共サービス、環境、雇用などのセクターにおけるグローバルな(つまり「南」の国々への責任として)拡充の一歩として、欧州レベルの金融取引税の導入を実現すべきである。

(参考)金融取引税Q&A(日本語)

◎無責任極まりない民間金融機関の主張

一方、より直接の利害関係のある金融機関からは、効果そのものに疑問の声が上がっている。

・欧州金融市場協会(AFME):金融取引税の導入は、大部分の欧州産業のコストを増大させ、成長を阻害することになる。

・ドイツ協同組合銀行協会:金融市場の安定化に向けた取り組みであるにもかかわらず、ユーロ圏のみに限定された金融取引税は効果的でない。

・英国銀行協会(BBA):金融取引税は世界規模で導入されない限り、存続可能でないというのが英国の見解だ。さもなければ、金融取引税の導入は世界市場の歪みという結果を招く可能性がある。

世界中を大混乱に落としいれながら、ECBから1%という低金利で借りた資金を20%もの高利で貸し付けてぼろもうけをしながら、不良債権は全部税金に付け替えて、ツケを庶民に回す民間金融機関にふさわしい、無責任な主張のオンパレードだ。

◎日本もグローバルな金融市場の受益者として責任を負担せよ

日本の全国銀行協会(国内で活動する138の国内銀行および46の外国銀行で構成)も、4月19日に「欧州委員会市中協議文書「金融セクターへの課税」に対するコメント」(PDF)と題する文書を公表している。

コメントでは、欧州レベルの金融取引税による利益(=安定化、公的援助など)を受けていない邦銀が税を負担することは「受益者負担」の原則にはそぐわない、欧州レベルでの課税によって資金が欧州を回避するという資金の歪みが生じるのではないか、などという懸念を表明し、金融取引税の現実性をふくめて慎重に検討するよう求めている。

欧州規模の金融の安定化で邦銀が利益を受けないなどという「言い逃れ」は通用しない。むしろ積極的に導入を賞賛し、かつ日本でも導入に向けた舵を切るための世論形成をするというのが、土地転がしやノンバンクへのダーディーな融資でバブルをあおり日本経済をメチャクチャにし、公的資金や低金利政策などでなんとか生きながらえながら、中小零細への貸し渋り・貸し剥がしを平然と行い、10年以上も法人税も払わずにデカイ顔をして、融資資金が税金で返済されることを条件に東京電力に2兆円もの緊急融資をしているこの国の金融機関の、せめてもの社会的責任ではないか、と思う。

円高是正のために4兆5千億円もの為替介入をしたり金融緩和をしても、逆に投機マネーの活動の場を広げるだけだ。G7に参加する日銀総裁、財務相は、金融緩和ではなく金融規制に率先して舵を切るべきである。
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