郵政民営化を推進し社会的連帯を破壊するTPPに反対しよう

郵政民営化を推進し社会的連帯を破壊するTPPに反対しよう
2011年2月19日


stop privatization


(1)

環太平洋経済連携協定(TPP)は郵政民営化とおなじく社会的連帯を破壊するものだ。またTPPは郵政民営化を促進する。郵政民営化に反対し、公共サービスを「市場」から社会に取り戻す運動がTPP反対にも取り組むべきだろう。TPP交渉への参加は、09年10月21日の閣議決定にある「郵便局ネットワークを、地域や生活弱者の権利を保障し格差を是正するための拠点として位置付ける」ことにも反するだろう。

(2)

TPPのサービス協定は、WTOの「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS:ガッツ)に準拠している。TPPが事実上の日米FTAであり、米政府・金融業界はことあるごとにWTO・GATSを持ち出し郵政民営化を推進する圧力をかけてきたことから、TPP交渉に日本政府が正式に参加することになれば、その圧力はこれまで以上に大きくなるだろう。

(3)

GATS交渉ではWTO加盟国が全155分野のどの分野について開放するのかについて要求/約束しあう(日本は金融、郵便を含むおよそ100分野で約束)。この「約束」は、(1)数量的な規制(店舗数、取引額など)である「市場アクセス」の開放と、(2)自国のサービス提供者よりも不利でない待遇を海外の企業に与えなければならないという「内国民待遇」という「二つの義務」が生じる。GATSでは「約束」をする際に、この「二つの義務」を制限する(=義務を免除する例外を設ける)内容を記載することができる。逆に言えば、約束する際に例外をもうけることを記載しなければ、今後その分野で規制強化をすることが困難になる(=他国からWTOに対して異議申し立てが行われる危険がある)。TPPにおけるサービス協定の場合は、義務の対象外とする分野及び措置を「留保表」に記載することになる。

【資料】TPPの概要と意義(石川 幸一/季刊 国際貿易と投資)
GATSの概要(日本機械輸出組合)
GATS条文および日本の約束分野(経済産業省)

(4)

GATSでは、サービス貿易の「漸進的自由化」が謳われ、そのゴールは明示されていない。つまり終わることのない自由化・規制緩和が進められるのである。一度自由化を約束すると、それを反故にするには加盟国全ての国に同じ条件を認めなければならないというWTOの大原則である「最恵国待遇」に基づいて、関係各国全てに補償を提案する必要がある(GATS21条)。つまり事実上、反故にすることは難しい。

(5)

GATSによって、公共サービスに対して民営化圧力が加わる。GATS第一条の3項(b)では「政府の権限の行使として提供されるサービス」は対象外とされている。しかし安心はできない。というのも、すぐ後の3項(c)で「商業的基盤に基づくもの」「一または二以上のサービスの提供者との競争によるもの」はGATS交渉の対象とされると謳っているからである。この規定によれば、公立病院、郵便、学校、保育園などほとんどの公共サービスが含まれてしまうのである。

(6)

05年10月、郵政民営化法案成立、07年10月の民営化実施によって、これまで三事業一体だった郵政公社は、郵便、銀行、保険、郵便局、持ち株の5社体制になった。この民営化によって「商業的基盤に基づくもの」であることが一層明確になった。米国政府および在日米国商工会議所は、民営化前から一貫して金融(とりわけ保険)、および物流(EMS)分野での市場開放を「要望」してきた。

(7)

在日米国商工会議所(ACCJ)は法案成立の翌年の白書でこう述べている。「ACCJの見解は、日本政府が郵政民営化を実行するのであれば、それは日本政府が対等な競争環境を実現し、郵政組織によるWTOの内国民待遇義務の遵守を達成する絶好の機会であるということである。」(ACCJビジネス白書、2006年)つまり、郵政民営化はアメリカ企業にとって絶好のビジネスチャンスであるということ。

【資料】ACCJビジネス白書、2006年 

(8)

在日米国商工会議所は郵政民営化の流れを評価している。09年3月、郵政民営化委員会に提出した意見書ではこう述べている。「日本郵政は、金融庁規制下にある国内外金融機関の、郵便局など郵政各社へのアクセスを拡大する努力をしている。これは対等な競争条件を確保するにあたって、初期段階における重要なステップである。自社グループ商品だけでなく、民間商品の自社チャネルへのアクセスを拡大するという日本郵政の決定は評価されるべきことである。」 米大使館はこう述べている。「米国は日本に対し、銀行、保険、及びエクスプレス・デリバリー分野において、この目的が完全に達成される形で郵政改革のプロセスが進められるよう要望します。」

【資料】2009年3月、郵政民営化委員会に提出した意見書

(9)

09年9月の政権交代以降に模索された郵政民営化見直しに対して、米政府・金融業界は「GATSの内国民待遇義務に違反する恐れがある」という主張を繰り返し展開してきた。2010年5月、ジュネーブにおいて、EU、米国のWTO大使が、日本郵政と民間企業との対等な競争条件が欠如していることに深刻な懸念を表明した。2010年10月の郵政民営化委員会におけるヒアリングで在日米国商工会議所とEUビジネス協会が共同でプレゼンを行っている。そこで「国際通商協定である『GATS』のもとで日本に要請される『内国民待遇』原則を遵守する義務に沿う形で改革を行うべきであるが、現改革案にはその視点が反映されていない。」「GATSの約束表には金融保険サービス、そして銀行その他金融サービスが記載されている。かんぽ生命・ゆうちょ銀行に対して、ほかの加盟国のサービス及びサービス提供者に対して与えられる待遇より有利な待遇が与えられる場合には、GATSの17条第1項に違反する」と批判している。

【資料】
米国と欧州連合が日本郵政に関する懸念を表明 2010年5月21日、ジュネーブ(2011/3/4追加)
2010年10月8日 郵政民営会委員会ヒアリング議事録
在日米国商工会議所とEUビジネス協会の提出資料

(10)

郵政民営化の見直しに積極的な国民新党は、「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」には民間金融機関よりも厳しい経営制限が課されている、郵便局と民間の銀行・保険の業務提携を禁ずる法律はないなど、と反論している。

【資料】国民新党の郵政改革法案Q&A

(11)

当の日本郵政は、民営化されたのを契機に経営範囲の拡大をはじめ積極的な展開を主張し、また実践している。ゆうちょ銀行の海外投資が急増している。08年3月は4580億円だった海外投資残高が、2010年9月までの半年間で7兆7千億円に急増している。ゆうちょ離れが進む中「このままではコスト割れの懸念がある」という日本郵政の斎藤社長の発言からも、高利回りが見込める海外運用で収益の底上げを狙っている、という報道もある(「日経新聞」1月8日)。民営化された日本郵政の「民営化したのだからもっともうけてもいいだろう、もうけないと赤字が膨らむ」V.S.米国はじめ金融業界の「まだまだ政府の関与が大きいので事業拡大は認められないし、それはWTO協定違反だ(=ビジネスチャンスをつぶされてたまるか!)」という対立があるが、私たちはこのどちらにも組しない。

【資料】日本郵政・齊藤社長の経営方針に対する批判(伝送便)

(12)

郵便事業の赤字が予想を上回り、新卒採用ゼロや、2000人規模で非正規職員をリストラする、という報道がながれている。しかし4事業一体であれば赤字にはならない。それ以上に言わなければならないことは、儲からないところ隅々にまで公共サービスを提供するコストは「赤字」とは言わないということだ。もし仮に「赤字」というのであれば、この「赤字」は、「民営化の目玉」として行われたペリカン便との統合失敗によるものである。民営化にまい進した政治と経営の責任を現場の労働者、とりわけ非正規の労働者に押し付けるものであり、「民営化リストラ」以外の何者でもない。郵政労働者ユニオンは2月6日の中央委員会アピールの中で、「赤字は、民営化によるあやまった収益増強策として宅配統合を強行した経営陣に責任がある」と責任の所在を正しく指摘している。郵便事業の「赤字」に対する補填を理由とした「ゆうちょ」「かんぽ」における事業拡大(=グローバルマネー市場における競争)や郵便事業、郵便局における無理な営業の強制などは、「公共サービスを市場から社会にとりもどす」という考えに逆行するものである。

(13)

「市場のルール」によって公共サービスとしての郵便事業が発展するなどありえない。「GATSの内国民待遇義務違反」と批判されてしまうのも、そもそも民営化したからだ。ゆうちょ銀行やかんぽ保険が、民間の銀行や保険会社と「市場シェア」を巡りグローバルな競争を展開する必要は一切ない。民営化・株式会社化されてしまった郵政事業を公的事業に戻し、お金もうけや政治・政争の道具とは違った考え、つまり格差社会を是正し、社会的連帯を強化するためのツールとしての郵便事業を労働者、利用者の経営・管理で実現する仕組みが必要だろう。そのための一歩として、見直し法案を今国会でしっかりと議論し、上記のような方向性に向けての第一歩として成立させることが大切だ。その取り組みの過程でこれからもWTO・GATSとの衝突は避けられない。対決に備えよう!

(14)

TPP交渉への正式参加は、WTO・GATSを上回る圧力になるだろう。事実上の日米交渉になるからだ。TPP交渉への参加は、郵政事業を市場から社会に取り戻す運動にとって百害あって一利なし。「民営化リストラ」とたたかう労働運動もTPP反対に取り組もう。同時にTPP反対に取り組む広範な社会運動も、「民営化リストラ」を許さない広範な社会的世論を喚起するための取り組みに協力してほしい。

【お願い】郵政に働く非正規労働者の正社員化と均等待遇を求める要請署名(2月末締め切り)

以下、TPPに取り組むためのいくつかの原則的スタンスを箇条書きに。

・TPPは郵政民営化をさらに推し進める梃子
・TPPは公共サービスを市場に明け渡す仕組み
・労働運動はTPPに反対する農民運動に連帯しよう
・「国際競争力」という資本の論理に対して、労働運動は「国際連帯」を掲げて対抗しよう
・TPP反対は「国民運動」ではなく「国際運動」で
・TPP反対、民営化反対運動の敵は「アメリカ」ではなく「シホンカ」だ
・日本にいる/来るすべての人の生存権、労働権、人権を守ろう

(以上)
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