資本主義の最高の段階としてのG20

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韓国・慶州で開かれていたG20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕した。新聞等のトップ記事や社説には「通貨戦争」の文字が踊り、「国際協調」を通じた危機回避のためのG20が「戦争」の場になっていることを物語っている。根底にある「戦争」にふたをして、「我々の協調は必要不可欠である」というメッキをほどこした共同声明が発表されている。

新聞などで報道された共同声明のポイントを見てみよう。

・通貨の競争的な切り下げを回避する
つまり自国のためだけに為替介入をするな、ということで、円やウォンに対する日本・韓国の介入にくぎを刺し、人民元のさらなる切り上げを暗に求めている。通貨が安いほうが輸出しやすくなる。

・先進国は為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視
つまり危機回避のために続けれている無制限に供給されているドル・円・ユーロなどが、新興国に大量に流れたり、急激な為替変動による自国経済への悪影響(たとえば未曽有の円高など)を監視する。「規制」ではなく「監視」というのがミソか。

・過度の不均衡を削減し、経常収支を持続可能な水準で維持するためあらゆる政策を追求する。
つまり中国からの大量輸入で経常収支が赤字になっているアメリカが、経常収支が黒字である中国に対して、黒字幅を対GDP比で4%以下に抑えるように主張した。しかし数値目標は、管理貿易・保護貿易につながり、枠をはめられることを嫌った各国から反対に遭い、数値目標は盛り込まなかった。対米輸出を低下させるには人民元の切り上げが必要というアメリカの主張と経済発展に外から枠をはめられたくない中国の主張の折り合いをつけた。

・銀行の国際業務を規制するバーゼル3を歓迎
つまり業績悪化時に配当を機動的に減らせる普通株と、過去の利益の蓄積である内部留保を主体とする「中核的自己資本」の比率を7%以上とし、危機の際にも30日程度は耐えうる支払い能力を維持する流動性を金融機関に求め、「大きすてつぶせない」世界の30の金融機関に対していくつかの上乗せ対策を提示し、事前に破たん処理の検討を推奨するなど、バーゼル委員会が決めた一連の政策をG20として承認するということ。2013年から段階的に実施され、19年1月から全面適用となる。


とどのつまり、G20の宣言は、これまでオルタグローバリゼーションなどが主張してきた、「通貨戦争」をもっとも単純に規制することが可能な通貨取引税(トービン税)や、「大きすぎてつぶせない」金融機関の私的所有を廃止して社会的管理に移行させる金融機関の社会化などを顧みることもなく、「ちょっとやりすぎだったね」という程度の反省しかせずに小手先の改革に終始し、危機の本質は過剰供給にあるにもかかわらず、需要不足にその原因を求めて「世界の需要を拡大及び維持し、雇用の創出を促進し、潜在的成長を高める構造改革を追求する」ことに必死になっているということだ。

(このほかにもIMF改革〔中国の影響力拡大〕、クリーンエネルギー〔化石燃料から原発へ〕、ODAを通じた途上国支援〔債務拡大〕、底抜けタックスヘイブン規制など、いつくもの問題はあるが、ここでは触れません)

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これまでの資本主義の歴史において幾度となく発生した経済危機と、それを克服するための「国際協調」体制が、結局は問題の真の解決を先延ばしにし、危機の度合いをさらに深め、資本の独占化と金融支配を強めながら、最終的に植民地支配と世界市場の強奪戦である二度の世界大戦を引き起こした。

戦後復興から高度成長、ソ連東欧の崩壊と中国の資本主義市場経済への参加、そして新自由主義グローバリゼーションの時代へ進む中で、「国家」の役割は後退したかのように思われた時期もあった。しかし08年秋のリーマンショックに端を発する金融危機への対応では、各国中央銀行によるほぼ無制限ともいえるマネーの供給(いまも続いている)、企業救済のための財政出動(いまも続いている)など、「多すぎてつぶせない」といわれた金融機関を救済するために、国家はありとあらゆる方策で、資本主義の救済に奔走している。今回のG20は国際市場を巡る国家間の対立である「通貨戦争」を「国際協調」というメッキで粉飾したが、国際協調で実施されたさまざまな施策のつけは普通の人々に押しつけられている。国家とは、支配階級による他の階級に対する独裁の道具であり、資本主義社会における国家とは資本家階級による労働者階級に対する独裁の道具ということになる。

世界史上はじめてそういった資本家階級の独裁をうちたおした革命の中心を担った人が、その前年に書いた一冊の本に次のような一節がある。

「商品生産は従来通り『支配』していて、全経済の基礎と考えられるとしても、しかし実際には、それはすでに破壊されており、主要な利潤は金融的術策の『天才たち』の手に帰するようになるほどに、資本主義の発展は進行した、ということである。これらの術策と詐欺との基礎には生産の社会化があるが、やっとこの社会化にまでこぎつけた人類の巨大な進歩が、なんと、投機者を利するようになっているのだ。」(『資本主義の最高の段階としての帝国主義』レーニン)

なんともまるで現代の社会を物語っているようだ。G20体制が「資本主義の最高の段階」であるかどうかは、わからないが、『帝国主義』の中で指摘されている資本蓄積の集中と金融支配の確立、寄生性と腐朽性などの特徴は、現在でも変わっていない。現在の第三世界を縛り続けている債務を通じた支配は、『帝国主義』の書かれた時代の資本輸出と植民地支配の関係と変わらない。

G20での議論では現代の「術策や詐欺」を規制することはできないだろう。世界の貿易額の100倍にも膨れ上がった投機マネーを規制し、「大きすぎてつぶせない」金融機関を社会化し、この惑星を破壊するまでに「成長」した生産手段の私的所有を廃止し、生産者の共同管理とすること。G20による議論を見るにつけ、その思いはますます強まる。

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