策あるのにアホすぎるんちゃうん?――政府・日銀に更なる緩和策を要求する人びと

ahosuginchan.jpg


■15年ぶりの円高水準に突入

「策あるのにアホすぎるんちゃうん?」(※注)

今朝(8月25日)の『日経新聞』朝刊の一面に掲載されている「策あるのに鈍すぎる」という菅野幹雄編集委員による解説記事を読んだ感想だ。

同解説記事は、15年ぶりに1ドル83円台までに急騰した外国為替市場と9000円を割り込んだ日経平均株価に関する政府・日銀の対応への提言である。

日経新聞によると、日銀が検討している追加緩和の内容は以下のようだ。

「資金供給手段の拡充が有力。長めの金利の低下を促すと同時に資金量の拡大で間接的な円高抑制効果も狙う。期間3ヶ月の資金を0.1%で貸し出す『新型オペ』の拡充を軸に検討されており、市場への資金供給枠を現行の20兆円から30兆円程度に積み増す案や、供給期間を3ヶ月から6ヶ月に延ばす案が議論される見込みだ。」

■日経新聞解説員の「策」とは

これに対して、菅野編集委員は「策あるのに鈍すぎる」の中で以下のように不満を述べている。

この間、「世界が成長を維持するための有利な条件を奪い合う状況なのに、日本の危機意識は希薄で、だれが責任を担って対処するかも定かではなかった。」

日銀による「金融緩和の検討は緊急課題である円高・デフレ阻止のほんの入り口にすぎない。為替市場での円売り介入にいつどんな形で踏み切るか。金融緩和も資金供給の手法を増やしたり、国債買い入れを拡大したりと、政府・日銀は有効な選択肢を幅広く探るべきだ。」

そして「有効な選択肢」として以下のように提言する。

「厳しい外部環境にさらされる日本経済を中長期で強くする抜本策を急ぐ必要もある。法人税率を引き下げる。新規事業のタネを増やす規制緩和などの成長戦略を前倒しする。企業の期待成長率を高める戦略をはっきり打ち出すときだろう。」

なぜ「アホすぎるんちゃうん?」と感じたのか、もう多言を要さないだろう。

■「無限の成長」に付き合う余裕はない

有限の資源と市場のなかで、資本の運動は無限の「成長」を求める。そんな経済システムはとっくに壁にぶち当たっている。「人々の欲望は無限」などと根拠のない主張で「無限の成長」を擁護する猶予などないことは、気候変動問題や拡大する一方の格差・貧困問題からも明らかだ。

リーマンショック以降に日銀をはじめ世界各国の中央銀行がとってきた金融緩和策や、日経の解説記事であげられている規制緩和策や法人税引き下げなどの一切合財は、無限の成長を求める(そして破綻する、そしてそのツケを貧しい人々に押し付ける)資本の運動をいっそう野放図に促進させるものでしかない。

無限の成長を求める資本の運動をしっかりと規制しコントロールする民主的な経済政策こそが必要なのだ。attacをはじめとするもう一つの世界をもとめる運動は、以前から、そして現在も、通貨取引に課税する「トービン税」の導入を主張している。金融は「緩和」ではなく「規制」しなければならない。私たちが目指す「もう一つの世界」に必要なものは「成長」や「開発」ではなく、さまざまな「連帯」に基づいて民主的に規制される経済である。「トービン税」はそれにむけた最初の一歩となる。

■いまこそトービン税の導入を!

長期的な構想は置くとしても、通貨取引に課税をするという「トービン税」は長期的な為替の安定をもたらし、急激な変動に対応する仕組み(スパーン型)と組み合わせることで、現在のような危機を効果的に回避することができる。また膨れに膨れ上がった有害無益なマネーを吸収し、それを世界的な貧困解消に使うことができる。この構想をいまこそ実現に移すべきだ。

菅野解説委員は最後にこう述べている。

「カギは今後のスピード感だ。党利や私利を優先して『不作為』を決め込む過ちは、日本のバブル崩壊後の20年間で幾度も繰り返されてきた。鈍すぎる対応は日本経済に重いツケを残す。その危機感をさらに強めなければならない。」

この言葉は、世界の圧倒的多数の人びとを搾取と戦争の鎖に縛りつけ、私的所有にもとづく経済システムを維持しようとする一握りの人びとに、熨斗をつけて返したい。

いまこそトービン税を!カギは今後のスピード感だ。


※注 「アホすぎるんとちゃうん?」のセリフは、「マネー」に翻弄されたさまざまな実際の事件やエピソードを、グリム寓話をモチーフにした物語としてアレンジした短編集『ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話』の第四話「アホスギンちゃん」に登場する人物の口癖から。『ヘッテルとフエーテル』は、マネーを巡るさまざまなカラクリが、面白おかしく、そして分かりやすく書かれてあるオススメの一冊。

スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する