新自由主義に包囲された国際連帯税~だが成功は可能だ



12月22日に閣議決定された2010年度の税制改正大綱の「第3章 各主要課題の改革の方向性」のなかに「国際連帯税」が明記された。

「国際金融危機、貧困問題、環境問題など、地球規模の問題への対策の一つとして、国際連帯税に注目が集まっています。金融危機対策の財源確保や投機の抑制を目的として、国際金融取引等に課税する手法、途上国の開発支援の財源確保などのために、国境を越える輸送に課税する手法など、様々な手法が議論されています。すでにフランスやチリ、韓国などが航空券連帯税を導入するなど、国際的な広がりを見せています。我が国でも、地球規模の問題解決のために国際連帯税の検討を早急に進めます。」
(資料)税制改革大綱(財務省)


国際連帯税とは、貧困や保健、環境など地球規模での問題に対応する税収であり、炭素税や航空券税などとともに、ATTACが創設以来主張してきた通貨取引に対する課税も含んでいる。税制改正大綱で言われている「投機の抑制を目的として、国際金融取引等に課税する手法」には通貨取引が含まれていると考えていいだろう。

実際、11月27日に行われた2009年度第14回税制調査会において、国際連帯税(ここでは「国際開発連帯税」といわれている)等の要望を説明した西村智奈美・外務大臣政務官は、調査会の中でこう発言をしている。

「我が国においていかなる国際連帯税を導入すべきかについては、現時点では残念ながらまだ未定でございます。・・・・・・課税対象については、やはりメインの議論は、いわゆる金融取引にかかる金融取引税のわけでありまして、峰崎副大臣も御承知のとおり、先般パリで国際会議が開かれまして、私もそこに出席をしてまいりました。新しい追加的な開発需要に対する新しい追加的な予算ということで、金融取引税、通貨取引税については議論がされておりまして、ただ、これは国際的に、一斉の声で導入をする必要があるものであると思いますので、これは別途そういった国際的なステージで議論していく必要があると思います」
第14回税制調査会議事録
外務省要望事項

日本政府の公式文書において、後ろ向きではなく前向きな表現で、通貨取引税を含む国際連帯税が書き記されたことは小さくない出来事だろう。だが、いくつかの、いや、いくつもの点で喜べない、慎重にならざるを得ない事実がある。
■新自由主義に包囲された国際連帯税

ひとつには、国際連帯税とともに提起された他の要望についてである。

税制調査会の中で、外務省は国際連帯税を含む五つの要望を提出している。(1)NPO法人に係る税制上の特例措置の延長・拡充、(2)国際開発連帯税の新設、(3)租税条約未締結国との締結促進、(4)法人税率の引き下げ、(5)連結納税の緩和、である。

新自由主義グローバリゼーションに対する鋭い批判と投機マネーの規制という立場を堅持し続けてきたattacの活動に参加しているものにとって、(3)(4)(5)のような要望は、新自由主義グローバリゼーションに奉仕してきたこれまでの政権の政策の延長としか映らない。

(3)の租税条約未締結国との締結促進については、このブログでもさんざん批判してきたG20サミットによるタックスヘイブンへの対応を具体化したものである。6月にはバミューダやスイスとの租税条約の基本合意を皮切りに、ベルギー(11月)、シンガポール(11月)、オランダ(12月)、マレーシア(12月)などとの間であらたな租税条約について基本合意に達している。税制調査会における外務省の要望は、これらをさらに進めることにほかならない。(資料:財務省)

(4)の法人税率の引き下げは、これまでも「国際的に高い水準である」などといわれて、引き下げられてきた経過がある。ちょうど20年前の1989年には法人税率は40%の水準であったが、10年前の99年に30%にまで引き下げられ、現在に至っている(資料:財務省http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/082.htm)。税率だけではない、法人税収も1989年には19兆円だったのが、08年度には10兆円にまで落ち込んでいる(資料:税制調査会)

(5)の連結納税の緩和については、そもそもこの連結納税制度が、経団連の強い要望によって2002年度から導入されたものである。それは連結グループ会社間の損益の通算が可能になるというものであり、それをさらに企業に有利なように緩和しようとするものだといえる。連結納税制度とは、簡単に言えば、親会社が1000億円の黒字でも、子会社が2000億円の赤字なら、それを通算して、赤字として計上でき、ひいては税負担を軽減することが可能になるというものである。これは97年の純粋持株会社設立の解禁、99年のM&Aのための株式交換制度の導入など、グローバル経済における企業再編を促す一連の政策の最後の詰めの制度だといわれている。それをさらに使い勝手のいいように緩和しようというのだ。
(資料)連結納税制度の批判的検討

このように、グローバル企業の世界的展開を後押しする一連の要望とならんで、国際連帯税が提唱されている。これは一体どうしたことか。税制改革大綱で言われている「途上国の開発支援の財源確保」が、大企業に対する大幅な減税措置をともないつつ提起されるとは一体どうしたことか。新自由主義を継続させようという要望といっしょに新自由主義を押しとどめようという通貨取引税が提唱されている。これは一体どうしたことか。

■守られない約束のなかで提起された国際連帯税

二つ目の不安がある。

それは、貧困削減や債務帳消し運動、通貨取引税導入などに取り組んできたNGOであれば、常識であるODAに関するOECD諸国の「約束」についてである。

ATTACフランス学術委員会メンバーであり、『トービン税入門』の著者でもあるブリュノ・ジュタンさんは、その著書のなかでこう指摘する。

「この税収〔通貨取引税:引用者〕によって、豊かな諸国の政府がODAに関する責任を免除されるということであってはならず、それは開発の安定的かつ恒常的な資金調達の基本的財源であり続けるべきものである。30年前、国連はOECDの中に入っている世界の最も豊かな22カ国に対し、自国のGNPの0.7%をODAに当てることを求める決議を採択していた。この目標は達成されていないだけでなく、大部分の豊かな諸国の政府が、その貢献を絶えず減少させてきて2000年には0.2%にまで下落したのであり、その間、開発を加速するものとみなされる民間資本を代わりに受入れるよう南の諸国に要求してきたのであった。豊かな諸国がそのGNPの0.7%をODAに当てるという約束を尊重していたならば、......今日不足している緊急人道援助を提供し、国連によって採用されている開発の正式目標(MDG:引用者)を超過することも可能にするだろう。」(『トービン税入門』ブリュノ・ジュタン著、社会評論社81~82ページ)

この対GNI比0.7%という目標は、1970年の第25回国連総会の決議の中に努力目標として記載された。経済開発協力機構(OECD)に加盟する30カ国のうちアイスランド、トルコ、メキシコ、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランド及び韓国を除く22カ国が参加する開発援助委員会(DAC)の加盟国のなかで、この対GNI比0.7%という目標を達成しているのは、2007年度においてはノルウェー、スウェーデン、ルクセンブルグ、オランダ、デンマークのわずか五カ国にすぎない。日本政府は1972年4月の国連貿易開発会議(UNCTAD)総会で「ODAの対GNP比0.7%達成」を意思表明していらい、一貫して目標を達成できておらず、2007年度では米国、ギリシャ(0.16%)についで22か国中三番目に低い0.17%にすぎない。
(資料)2008年度ODA白書関係資料

西村政務官は、税制調査会でこう述べている。

「いわゆる寺島委員会、国際連帯税の協議会ですけれども、その中の議論でも、やはり他の目的ではなく開発目的で、特に、MDGs などの達成のために使うのがよろしかろうという議論が主流である」

もしかりにMDGs(国連で採択された貧困削減の目標。2015年までに貧困半減などの目標を設定している)などの達成のために使う、というのであれば、まず30年前の努力目標を達成してからにするべきだろう。

西村政務官も参加した10月22日フランス・パリで開かれた「開発のための国際金融取引に関するタスクフォース」を前に、attac国際ネットワークが発表した声明でも、そう指摘している。

「豊かな国が過去にした自らの約束を反故にできるようにすべきでもないだろう。開発への公的援助は、今日まで『開発のためのミレニアムの目標』で定められていた国内総生産の0.7%という目標の3分の1にも達していないのであって、導入されるべきこの税は、そのような公的援助の代替であってはならない。」(attac国際ネットワーク声明、全文は最後)

■金融機関の自発性にゆだねられる規制力のない国際連帯税

もうひとつの懸念がある。それは想定される通貨取引税が、あらかじめ規制的効力をそぎ落とされ、新自由主義に親和的なものとしてのみ位置づけられているのではないか、ということである。

日本をはじめ12カ国の政府関係者などが参加した「開発のための国際金融取引に関するタスクフォース」閣僚会合を招集したベルナール・クシュネル仏外相は、9月のG20ピッツバーグサミットを前にして、一回の通貨取引に対して0.005%を課税することを提案した(=100万円の取引きで50円の課税)。しかもそれを金融機関の自発性にゆだねるというのだ。だがこれでは、投機マネーの規制にはならない。

Attacフランスは、9月18日に声明を発表し、これを批判して次のように述べている。

「私たちは、これ〔クシュネル提案:引用者〕を真剣に検討すべきなのだろうか。そうした貢献の自発的な要素とは、銀行および金融機関が自己規制できるという確信、ならびに金融安定化および社会的調和を作り出す市場の自発的メカニズムへの信頼にかかっている。一方で、金融取引に課税される話にならないほど低い税率(0.005%)は、クチネル外相によれば、『銀行を再保証する』目的のみを持つものである。」

「すべての金融取引に『トービン・タイプ』の税を適用すべきである。税率は十分に高く設定されるべきであり(トービンは0.5~1.0%の税率を提案した)、かつ、価格変動および金融投機を本当に制止するために、〔為替相場の急激な変動の際には:引用者〕大幅な税率引き上げが可能でなければならない。」
真のトービン税の実現に向けて:ATTACフランスの声明

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以上、気になる個所を羅列した。2010年度の税制改革大綱に盛り込まれた「国際連帯税」に関する一文をめぐり、今後もさまざまな取り組みが行われるだろう。新自由主義に包囲された国際連帯税の状況は、主体的な状況も含めヨーロッパ以上に厳しい。

10月パリでの「開発のための国際金融取引に関するタスクフォース閣僚級会合」の直前に発表されたattac国際ネットワークのコミュニケはこう述べている。

「だからこそ、もうひとつのグローバリゼーションを目指す運動のこの歴史的要求を実現するために、社会運動と市民の圧力が強められなければならないのだ。Attac国際ネットワークが来るべき数ヶ月間のうちにこの方向に向けたイニシアチブを取るだろう。成功は可能だ。」

そう、成功は可能だ。

以下、attac国際ネットワークの宣言を掲載する。


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「国際金融取引と開発」会議に関するAttacのコミュニケと宣言
2009年10月21日

〔コミュニケ〕


 ベルナール・クシュネル外相は明日、パリで「国際金融取引と開発に関するタスクフォース」第1回会議を招集する。この会議は、貧困国の発展への公的援助資金を拠出するための金融取引税を実施する意向を示している12カ国を集めて開かれる。

 Attacは、結成以来、トービン税を導入した国際的な税システムという考えを擁護してきた。この税は、金融投機に反対すること、そして地球上の65億の人間の間で資源を平等に分配すること、の二つの密接不可分な目標の達成を目指すものである。

 ベルナール・クシュネル〔フランス外務大臣〕が提案しているものとは反対に、この税は強制的な課税でなければならない。なぜなら、もし故意の投機家だけに課税するとすれば、投機に対する税金が有効なものになり得るかどうかもはっきりしないからである!

 また、豊かな国が過去にした自らの約束を反故にできるようにすべきでもないだろう。開発への公的援助は、今日まで「開発のためのミレニアムの目標」で定められていた国内総生産の0.7%という目標の3分の1にも達していないのであって、導入されるべきこの税は、そのような公的援助の代替であってはならない。

 最後に、この税は、水、健康、教育などの公共財産、あるいは共有財産の保護と生産に役立つものでなければならないだろう。このためには、きわめて低い税率にもとづく見積りであるベルナール・クシュネルの表明している200億ユーロまたは300億ユーロを上回る世界の公的資金が必要となる。2009年9月に発表した報告の中で、Attacは、エコロジー税を実施しつつ、金融取引全体、多国籍企業の連結利益に課税することによって、必要な1500億ユーロ、すなわち、世界の生産高の約2.5%の資金を集めることができることを示した。

 だから、われわれはフランス政府と国際タスクフォースに訴える。グローバリゼーションによって余儀なくされた困難に対応するような水準へと自らの望みと提案を引き上げるとともに、作業日程を確定すべきである、と。この作業日程は、単一の税ではなくて、信頼できる率で富の真の再分配になるような、新たな資金の調整と創造を目指した相互補完的な複数の税を含むべきである。

 この会議に当たっては以下のAttac国際的ネットワークの宣言を参照すべきである。

〔宣言〕

銀行は自らの危機に対する代償を支払うべきである!
今すぐ金融取引税を!


 Attac国際ネットワークは、金融取引に対する課税を望む12カ国を集めた、来るべき10月22日のパリの第1回会議の「国際金融取引と開発」に関するタスクフォース」の原則を肯定的なものとして受け入れる。

 Attacは、創設以来、このようなタイプの税の創設のために闘って来た。今日の経済と金融の危機という情勢のもとで、われわれのネットワークは、この危機に責任のある者たちが危機の結果に対する代償を支払うべきであるという考えを支持する。金融分野の縮小を促進し、投機的攻撃を思いとどまらせ、雇用や環境や社会的権利への一切の脅威から民衆を守るために、このような税は不可欠である。

 政府は、銀行を救済して危機の衝撃を緩和するものとされる計画に資金を投入するために、膨大な負債を蓄積してきた。国家予算は、長年の間、膨大な赤字に耐えて来た。社会、教育、文化への予算の劇的な削減が実施される恐れがある。経済の社会的、エコロジー的方向への転換を促す緊急のイニシアチブに対しては資金が割り当てられない可能性がある。

 同時に、いくつかの政策は、営業税を廃止したり、家庭にのみ負担がかかる炭素税を創設したりすることによって、政府が危機の重圧を民衆に転嫁するつもりであることをすでに立証している。こんなことは受け入れられない。

 危機のつけを支払わせるべきなのは、この経済的災厄に責任のある者たちであり、銀行、投資機関、すべての金融主体である。

 すべての金融取引に対して課される税というのは、このための実に適した手段である。この税は利益に対する課税として作用する。それは、株式、証券、デリバティブ商品、外国為替のすべての取引に、要するにこの分野におけるすべての取引主体に対して課税されるのである。

 金融市場でなされる膨大な取引量を考えると、わずか0.1%の税率でさえごく短期間のうちに国家予算を均衡させるための十分な税収をもたらすことができるであろう。この税は、新たな収入をもたらすだけにとどまらず、同時に抑止効果をももつだろう。なぜなら、多くの投機的取引にとって、たとえ0.1%の税率がこれらの取引の圧倒的部分では完全に収益を引き出すことができるとしても、もたらされる収益は、税率が0.01%から1%の間で変るのに応じて、変動するからである。

 技術的には、この税は、個人当座預金にかかる銀行経費とおなじほど実施は容易である。

 金融取引に対する税はまた各国ごとでも支障なく導入できるであろう。この税は、貿易の実際の基本方針と国際補償システムを迂回することによってしか回避できないだろう。だが、そうすることは税金それ自身よりも取引筋にとってははるかに高くつくだろう。IMFには、次回のG20までに、ひとつの任務が委託されている。すなわち、危機によって生み出された全般的な代価に対する資金提供に金融部門が十分に貢献し得るような方式を詳細に定めた提案を提出するという任務である。しかしながら、この税への支持を表明している各国政府の責任者たちは、全世界的な実施という条件があってあってはじめてこの税を支持するとしたり、自発性にもとづく、すなわち、0.005%というどうしようもない低い率にもとづく税を計画したりしている。

 だからこそ、もうひとつのグローバリゼーションを目指す運動のこの歴史的要求を実現するために、社会運動と市民の圧力が強められなければならないのだ。Attac国際ネットワークが来るべき数ヶ月間のうちにこの方向に向けたイニシアチブを取るだろう。成功は可能だ。
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