多血症的恐慌:日銀の量的緩和再開によせて

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12月1日、日銀がデフレ脱却のために、さらなる金融緩和政策を打ち出した。金融機関に対して新たに10兆円規模の資金供給を行うという。

「日銀は1日、臨時の金融政策決定会合を開き、金融機関が資金をやりとりする短期金融市場向けに、10兆円規模の新たな資金供給策を追加することを全員一致で決定した。年0.1%の固定金利で、期間は3カ月。やや長めの金利の低下を誘導するのが狙いで、日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下で持続的な成長経路に復帰するため、政府と歩調を合わせて金融面から支援姿勢を強めることを明確にした。」(12月1日 時事通信)
白川方明・日銀総裁は、11月30日に行われた講演でこう述べている。(講演録

「持続的な物価下落の根本には、経済全体の供給能力に比べて需要が弱いという基本的な要因が存在しています。」

新たに10兆円あればそれで需要がまかなえる、ということではないようだ。

「歴史を振り返りますと、物価の下落が経済活動の収縮を招き、景気と物価の悪循環をもたらした事例のほとんどは、銀行倒産などにより金融システムが著しく不安定化した時期、まさに金融が収縮していた時期に生じています。こうした場合、資金の手当てがつかなくなった企業は、当座の資金繰りをつけるために、自社製品の投げ売りを行ったり、雇用を維持できなくなります。そして、それが物価や賃金の下落をもたらし、さらに経済の悪化につながってしまいます。このようなケースはやや極端ではありますが、景気と物価の悪循環を防ぐ上で金融システムの安定を確保することが極めて重要である、というのは歴史の貴重な教訓です。」

簡単に言うと、当座の資金繰りをつけるために投売り→一層の物価下落→恐慌、という最悪のシナリオにならないように、これでもか、といわんばかりの資金を金融機関を通じて市場に流し込む、ということだ。

こんなことはこれまでにも行われてきた。2001年3月から2006年3月まで、当初5兆円程度だった日銀当座預金残高(金融機関が日銀に持っている当座預金)が、最高時には35兆円規模にまで拡大した量的緩和政策をとってきた。【今回は、日銀当座預金の残高を10兆円積み増す、という方法ではなく、短期金融市場の金利の誘導目標水準を0.1%とするという方法:12月2日追加】

だけど、需要はいっこうに回復しない。なぜなんだろう。

壁にぶち当たったときには、逆立ちして考えるといいアイデアが浮かぶというドラマが昔あった。

「需要が弱い」からではなく「供給が過剰」と考えてみると、何のことはない。経済学の先人達が提示してきた「過剰生産恐慌」のほんの一歩手前であるに過ぎない。フーリエはそれを「多血症的恐慌」と呼び、エンゲルスは「生産方法の交換方法に対する反逆」と呼んだ。

先の白川総裁は、正しくも資本主義の「歴史を振り返り」、資本主義において必然的・周期的に訪れる過剰生産恐慌を先送り(解決することはできない)するために、とりあえずマネーを大量に供給しているに過ぎない。

貨幣は、1970年代に金との兌換という鎖から(見かけ上は)解放され、80年代から90年代にかけてさまざまな規制緩和を経て、2000年代に入り、地球全体を飲み込むほどにまで拡大し、そして弾け飛んだ。

今回の量的緩和によってまた新たなバブルの火種が灯された。

これ以上、バブル崩壊のツケを貧しい人々と地球環境に押し付けさせてはならない。

生産手段と金融システムの社会的コントロール。これなくして恐慌を防ぐことはできない。「資本主義的生産の真の制限は、資本そのもの」なのだから。
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