G20にタックスヘイブンの規制ができるのか? いや怪しいものだ!

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G20プロテストinピッツバーグの行動に参加したattacドイツの仲間たち
「銀行ではなく人々の救済を!金融市場を非武装化しよう!」のバナーとともに


ロイターの報道によると、G20サミットを翌日に控えた23日、イギリスのダーリング財務省は「G20がすでに租税回避地(タックスヘイブン)の問題に対応したことから、今後は規制の緩いオフショア市場が金融システムのリスクにならないかに関心が集まる」との認識を示したという。
経常黒字国、内需喚起の必要性を認識=英財務相(ロイター2009年9月24日)

世界最大のタックスヘイブンであるイギリスの財務大臣のこのような認識は、「金融市場の非武装化」を目指すattac運動の認識とは大いにかい離している。

ダーリング氏は何をもって「租税回避地の問題に対応した」というのだろうか? 
昨年11月にワシントンで開催された最初のG20金融サミットで採択された宣言において、タックスヘイブンへの取り組みは次のように提起された。

「税務当局は、経済開発協力機構(OECD)等の関連機関の作業に依拠しつつ、引き続き、税務情報の交換を促進するための努力を継続する。透明性の欠如と税務情報の交換の不備は精力的に解決される。」
改革のための原則を実行するための行動計画(2008年11月15日、ワシントン)

今年4月にロンドンで開催された第二回G20金融サミットでは、タックスヘイブンに対する今後の取り組みとして次のように示された。

「首脳は、タックス・ヘイブンを含む非協力的な国・地域に対する措置を実施することに合意。首脳は、財政及び金融システムを保護するために制裁を行う用意がある。」
「首脳は、2004年のG20において支持され、国連モデル租税条約に反映されている情報交換に関する国際基準を、各国が採用することを求める。」
「首脳は、税に関する透明性についての国際基準を満たさない国・地域に対して合意された行動をとる準備ができている。この目的のために、首脳は、以下のような各国が検討すべき効果的な対抗措置の項目表を策定することに合意。」
ワシントン行動計画の進捗表(2009年4月2日、ロンドン)

そして9月5日にG20財務相・中央銀総裁会合で提出された「ロンドンサミット・ワシントンサミット行動計画の進捗表」では、タックスヘイブンへの取り組みが「前例のない大きな進歩があった」として、70以上もの租税情報交換条約が締結された、と自画自賛している。ターリング氏の発言の根拠はここにある。
ロンドンサミット・ワシントンサミット行動計画の進捗表(9月5日、ロンドン:英文)

一方、タックスヘイブンに対する規制を求めるattacフランスは9月17日に、投機マネーを規制する手段の一つとしてタックスヘイブンに対する規制が必要であるが、G20サミットで議論されている対策では規制することはできない、として新しいレポートを発表した。

ピッツバーグG20:タックスヘイブンは消滅途上? いや、怪しいものだ(ATTACフランス:フランス語)

目次は次のようになっている。

 租税司法回避地についての復習
  租税・司法回避地をどう定義するか
  自ずと語る数値データ
  減税競争、資本主義の激戦地
  回避地が社会、経済、環境に及ぼす破壊的な影響
 G20後:租税・司法回避地の終焉に向かうのか
  国家はなぜ租税・司法回避地に対策を取ろうとしているように見えるのか
  ブラックリストの歴史、またの名は、国際社会の失敗の象徴
  租税協定:OECDモデルは前進か
 ATTACの提案


詳細な内容はわからないが、ここでは「租税協定:OECDモデルは前進か」という箇所に注目したい。

モデル租税条約には、現在、租税条約にはOECDモデルと国連モデルの二つがある。両者を比較すると、OECDモデルは資本輸出国の立場を尊重し、国連モデルは投資受入れ国(=途上国が多い)の立場を尊重する傾向がある、といわれている。
◎(参考)租税条約の概要と我が国の締結の動向(財務省広報誌「ファイナンス」2009年2月号)

G20やOECDなどは、タックスヘイブンが「協力的」になって、各国と租税条約を締結しつつあることを評価している。先のターリング氏の発言もこれに基づいている。だがそこで言われている「協力的」の具体的中身は、OECDが2002に制定した「情報交換に関するモデル協定」に基づいた条約を締結したことを指している。

先に紹介した4月のG20金融サミットで示された「ワシントン行動計画の進捗表」では、「2004年のG20において支持された情報交換に関する国際基準を、各国が採用することを求める」とされている。2004年G20の「税目的の透明性と情報交換に関するG20声明」を見てみると、この「04年のG20 において支持された情報交換に関する国際基準」を次のように説明している。

「『税に関するモデル情報交換協定』(2002年4月にOECDにより公表)に反映されている、税目的の透明性と情報交換に関する高い基準を支持する。これらの基準を採用するようすべての国に要請する。」
税目的の透明性と情報交換に関するG20声明のポイント(2004年G20財務相・中銀総裁会合:ドイツ・ベルリン)

だが、ここで述べられている「税に関するモデル情報交換協定」とは、租税情報の「自動的情報交換」という、attacフランス等のオルタ・グローバリゼーション運動が要求する事柄がすっぽりと抜け落ちているのだ。

OECDモデル租税条約の26条では、税情報の交換を幅広く規定しているが、その形態や方法については限定をしていないことから、別途、情報交換に関するモデル協定をつくり、そこで情報交換の形態や方法を提示している。

OECD租税委員会がまとめた「税目的の情報交換マニュアル」ではこう述べられている。

「(OECDモデル租税条約の)第26条は幅広く情報交換を規定しており、情報交換の形態や方法を限定してはいない。情報交換の主要な形態は、要請に基づく情報交換、自動的情報交換、および自発的情報交換である。(2002年の租税の情報交換に関する)モデル協定は、自動的および自発的交換の可能性を含めることによって協力を拡大することで締約国が合意することは可能だが、要請に基づく情報交換にのみ適用される。 」
OECD租税委員会による「税目的の情報交換マニュアル」の承認について(2006年5月国税庁ホームページ)

ということで、G20の財務担当者やOECDが称賛する「タックスヘイブンへの対応」とは、2002年に制定された「情報交換に関するモデル協定」、すなわち一方の締約国の要請がなければ情報を明らかにする必要がなく、その時々の執政者の利害関係によってしか租税回避に関する情報が開示されない危険性の高い約束事をもって「前例のない大きな進歩があった」などと主張するG20にタックスヘイブンの規制ができるはずがない。

Attacフランスの報告は次のように述べている。

「租税・司法回避地が、世界金融システムの乱調と瓦解に甚大な責任があることは、今日もはや明らかである。にもかかわらず、G20の最初の二回の会合は、脱税と租税回避、減税競争、不正義に対する真の解答をもたらそうとはしなかった。」

「9月24-25日のG20ピッツバーグ会合を控えた現在、オフショア金融は後退はしていない。場所を移しているだけだ(ヨーロッパからアジアへと)。G20に、金融利権重視の論理を問題視する意思がない以上、この機構に期待できるものはほとんどない。」

「ATTACの提案は、これまでの現状とはまったく別の見地に立つ。あの回避地は協力的で、あっちの回避地は非協力的だといった判断を下すといったものではない。」

そして、「銀行の秘密も、不透明な現状も、租税・司法回避地が大いに荷担してきた税の不正義、社会的な不正義も、終わりにできるような一連のルールを提案するものだ」として、税の自動的情報交換はもちろんのこと、中央銀行の役割変更や証券化や先物取引の規制、グローバル課税などの一連の提案を行っている。

ATTAC Japan(首都圏)のブログでも、G20に対するattacフランスの提案などが紹介されている。ぜひ参考にしてほしい。
attaction

G20にタックスヘイブンの規制ができるのか? いや怪しいものだ!

※税の情報交換に関する情報はLe Tour de France des paradis fiscaux!:G20ではタックスヘイブンの規制はできないも参照してください。
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