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エクアドル国債の格付けが「CCCマイナス」? だからどうした!---金融危機のもとで進むエクアドルの債務監査→帳消しに圧倒的支持を!

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ワシントンでの金融サミット関連報道が紙面を圧倒する11月16日の「日経新聞」の国際面に小さな記事が掲載された。

エクアドル、国債の利払い延期 「取引の違法性調査」(日経新聞11/16)

これは!と思い、ロイターのウェブサイトをのぞいてみた。あった、あった。

利子の支払猶予活用へ、一部債務の支払い停止の可能性=エクアドル(2008年 11月15日)

ロイターの記事によると、エクアドルのビテリ財務相曰く「政府は最大30日間の支払猶予を活用すると決めた。深刻な不正行為の可能性が明らかになったため、監査報告の公式発表を待つことを決定した」。

間違いない。このかんattacをはじめいくつかの団体が注目しているエクアドル債務監査委員会による活動の成果だ。

2007年12月に東京、関西、九州で活動するNGOなどが共同でエクアドル債務監査委員会のメンバー2人を日本に招聘し「岐路に立つラテンアメリカ エクアドルからの証言:エクアドルの不当な債務を帳消しに!全国講演ツアー」(案内)を行った。その際に作られた分厚い資料集に収められていた「岐路に立つエクアドル 公的債務の総合的監査のために」という報告書では、この「グローバルボンド」が「許容されざる融資」のひとつとして紹介されている。

エクアドルは60年代の軍政時期に多額の債務を負った。78年に民政に転換、79年から大統領になったハイメ・ロルドスは債務に依存しない自立的な政治を目指すも81年に事故死。その後の政権は軍政時期以上に対外債務の鎖の支配に甘んじることになる。債務は減るどころかますます重くエクアドル民衆にのしかかった。エクアドルの支配階級は自らの民間債務をエクアドル政府の公的債務につけかえることで、私的負担をエクアドル国民全体に押し付けた。何度も支払いを拒否する機会があったにもかかわらず、多国籍資本と共通の利害関係のあったエクアドルの資産階級の影響を受けた政府、議会は、さまざまな手法で、多国籍資本、多国籍金融機関、そしてエクアドル国内の富裕層のために借金を返済してきた。社会保障や生存権を犠牲にしながら。

債務の証券化(国債)などを通じて債務不履行に陥らないように=貸し手の側が損をしないような措置がとられるも、それは「単に返済に絡む問題を先延ばしにしただけであった。高利率が再び債務返済を持続不能なものにし、エクアドルは1999年に再度支払いを停止しなければならなかった。これは近年の歴史でエクアドルが最も危機的状況に置かれた時期であった。」(前述報告書21頁)

1980年から2000年の間に1ドルに対するスクレ(エクアドルの通貨)の価値は25スクレから25000スクレにころがり落ちた。2000年1月、エクアドル政府はスクレを廃止し、通貨をドルにした。これで一切の財政措置をとる余地を奪われた。

このような危機的な状況の中で債権者の利益を確保するために導入されたのが「グローバルボンド」であった。

今回、利払いが延期されたのは「グローバル・ボンド30」と呼ばれるもの。報告書によると「2001年には利率年4%、2006年に9%に達するまでは毎年利率が1%UPする。2007年から2030年までは利率年10%で償還期間30年(総額45億ドル)」とされている(同21頁)。

同報告書では、債権者が持っていた債権の額面価値は62億9800万ドルだったが、価格の下落によって実際には15億7500万ドルの価値しかなかった。しかしエクアドル政府は、この15億7500万ドルの価値しかない債権を39億5000万ドルの「グローバルボンド」と交換した、と厳しく指摘している。債権者はそれだけでなくその他さまざまな優遇措置を受けたと報告されている。(同37~38頁)

「このように片方だけに極端に有利な内容を見ると、本当に両者参加の元に交渉が行われたのだろうか、という疑問が湧いてくるのも無理はない。実際エクアドル政府は、地元政財界エリートの利益に沿って債権者の出す条件を異議なく受け入れた様に見える。ウィルマ・サルガドが指摘しているように、地元の金融セクターは多量の海外証券を所有することで海外の債権者と深く繋がっている。誰も債務国、すなわちエクアドル国民の利益を擁護しないのはそのためである。エクアドルはいつも負け続けてきた。そして、メディアの誇大宣伝とは裏腹に、『画期的な交渉結果』とは常に債権者のためのものだった。」(同38頁)

同報告書では、「グローバルボンド」の「債券発行のプロセスには、一貫して非常識な方法が取られており、これらの債務は不当な債務に分類されるべきである。これらは国家の利益に資さなかったし、管理運営はもっぱらごく少数者の利益のために行われた。これらの債券は、許容できない条件の元で、不均衡な力関係にある当事者間で合意されたものと結論づけることができる」(同21頁)としている。

そして「債務のリスケや再交渉のために過度の条件を背負わされることや、融資に付随する条件(ブレイディ・ボンドをグローバル・ボンドに転換するプロセスや、IMFや世銀から押し付けられた構造調整プログラム、等)の目的が債務負担を減らすことではなく、むしろ債務を通してその国のコントロールを目的としていた場合、これらは全てエクアドル債務の帳消しの根拠となる。」(同15頁)

エクアドルはすでに借りた分以上の金を返している。借りがあるのは北の諸国のほうだ。

「全体として、エクアドルはすでに借りた金の何倍も支払っており、北に国に対しては実質的に「債権者」である。実際、南の国々は多大な社会的・生態系上の”資金援助”を北に対して行っており、実は北は南に対して賠償金を支払うべき義務を背負っているのである。」(同15頁)

この報告書ではエクアドルの不当な債務についての詳細な報告がなされているが、それは決してひとりエクアドルだけの問題ではない、と報告書は訴える。

「エクアドルの債務は、北の国々にとってありがたいものではあるが(いや、それ故にこそ)実は不当なものだ、と断定できるいくつかの要素がある。まず最初に、これはエクアドル固有の要因ではなく南北関係の根本に関わることなのだが、不平等な交換システムが上げられる。つまり第三世界が原材料を輸出し、北から高価な工業製品、加工品を輸入しなければならないというシステムである。この不平等な関係の中で、南の国々は加工産業を発展させることができなかった。北の国が付加価値が高い分野を独占し続けるコツを心得ていたからである。」(同18頁)

貸し付けた側の北の国々の人々が、この問題を真剣に考え、政府を突き動かす大衆的な取り組みを行わなければならない。日本でも取り組みを開始する必要がある。

10月18日、世界のオルタグローバリゼーション運動の間で「債務帳消し週間」として位置づけられたうちの一日をつかって、東京では、attac、Parc、聖コロンバン会の共催で、「貸した金(援助)は返すべき?~債務と貧困のつながりを考える:エクアドル・キト会議報告~」(案内)があり、そこでエクアドルでの債務兆系しか意義に参加してきた春日匠さんの話を聞いた。エクアドルの債務監査委員会では、日本の金融機関にからむ債務資料を所有しており、「不当な債務」である可能性がある、とのことであった。麻生首相は世銀やIMFに10兆円も使う余裕があれば、まず何よりもエクアドルをはじめ、途上国の不当な債務を帳消しにすべきだ。報告会の参加者はちょっと少なかったが、報告者の春日さんからも、とにかく取り組み始めることに意義がある、というようなことも言われた。日本でも世論喚起や宣伝のためのさらなるネットワーク作りが模索されることを期待したい。

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さて、先のロイターの報道では、格付け会社の「スタンダード&プアーズ」が、エクアドルの格付けを「Bマイナス」から「CCCマイナス」へ3段階引き下げたと報道している。略奪ローン債権のサブプライムローンにAAAなどの格付けをしていた会社がよく言うよ、と思うが、かれらの格付けはカジノ資本主義のための格付けであり、不当な債務の帳消しによりすこしは救われる社会保障や貧困解消の度合いの格付けではないのだ。CCCマイナス?だからどうした! 命よりもカネを優先する格付けなんかいらない! 貧困のないもうひとつの世界にむけた債務帳消しを行う国の国債は僕らにとってはAAAだ!とオルタグローバリゼーション運動は声を大にして言おう。

金融サミットでは、マネーという名の麻薬漬けでぼろぼろになっているIMF・世銀などのブレトンウッズ機関に対してさらに麻薬をつかって麻痺状態にてやり過ごそう、という提案が大きく取り上げられている。「それじゃあかんやろ!」と世界中のオルタグローバリゼーション運動はここでも声を大にして言おう。問題の先送りとさらなる深刻化を招くG20のIMF・世銀強化策に比べ、エクアドルやボリビアなど、これまで帝国と債務の支配に苦しんできた小さな国々の民衆の圧力で権力についた政権は、世銀・IMFなどから自立し、関係を絶つ政策を進めていることに希望を見出す。

ラファエル・コレア現大統領が「2005年、パラシオ政権の財務大臣だった時に世銀が下した決定へのお返しとして、2007年4月末にラファエル・コレアが大統領命令で世銀代表エドワルド・ソメンサットを追放したのは、憲法の精神の具現化に他ならない。FEIREP(石油安定化基金)が提示した、石油収入を債務返済ではなく社会政策に優先的に回すという改革案に対して、世銀はすでに約束されていた1億ドルの融資を凍結するという対抗措置に出た。コレアはこの国際機関からの介入に抗議して財務大臣を辞任した。コレアは世銀代表に対し、2005年の措置に関して48時間以内に弁明するように通告した。なんらの説明もなかったので、コレアは彼を追放した。エクアドル大統領は、世銀の融資凍結は国家主権を完全に踏みにじったものであったと宣言した。この決定は、新大統領の断固たる決意と、変革への真の願いを反映したものであった。」(同報告書19頁)

500年もの間、帝国の支配に抗ってきたエクアドルの民衆の圧力で押し上げられたコレア政権が断固たる決意を持って債務帳消し政策を進めることができるよう、日本からも今回の利払い延期の決定を熱烈に支持したい。

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この報告書が収められた資料集には、IMFや世銀のような貸し手の側のための融資ではなく、「地域の人びとの統合に貢献し、人権や環境・発展に対する権利を全面的に尊重した」国際金融機関としての「南の銀行」についてもいくつかの文章が収められている。また債務監査委員会に海外NGO代表として参加しているエリック・トゥーサン氏の団体、第三世界債務帳消し運動の政策ペーパーなど、貴重な資料も満載だ。

これらの貴重な報告書を翻訳してくれたのは途上国債務問題の入門書『世界の貧困をなくすための50の質問』を翻訳した大倉純子さん。いつも債務問題では勉強をさせていただいている。こちらのサイトも参考になる。

報告書の収められた資料集はまだ若干あまっているようなので、この機会にぜひ購入して読んでみてほしい。『50の質問』が入門編だとしたら、報告書は、具体例が記された『上級編』とでも言えるだろうか。

ドタバタでヒーヒー言いながら資料集を作った甲斐があったなぁ。
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