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雇用の不安定と「貯蓄から投資」を野放しにした緊急経済対策(その2)

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10月30日に麻生首相が発表した追加経済対策には、第二の重点分野として「金融・経済の安定化」として、金融資本市場安定化対策が盛り込まれている。

「多様な投資家が参入し、厚みのある株式市場の構築に向け、市場の活性化を図るための環境整備を進める」として、株式譲渡・配当の優遇税制の3年間の延長が盛り込まれている。この優遇税制は2003年から導入され2008年で終了する予定だった。株式投資の譲渡益と配当の税率は10%の軽減税率(本則は20%)が適用されているが、2009年からは原則20%に戻ることが決まっていた。これをさらに3年の延長するというのだ。

この優遇税制の目的は、金融庁のホームページにはっきりと書かれてある。

(金融庁ホームページより)
証券投資がより身近になりました!
~ 「貯蓄から投資へ」:証券市場の構造改革


カジノ化した金融市場に庶民の貯蓄を流し込むことを目的とした優遇税制を、カジノが破綻したいまさらに3年延長しようというのだ。

この証券優遇税制は、「金持ち減税」という批判が一般的だ。

主張 証券優遇税制 「逆立ち」の金持ち減税やめよ(「しんぶん赤旗」2007年3月8日)

しかし、金持ちよりも中間層が証券優遇税制を活用している、という反論もある。

金融庁 平成20年度税制改正要望項目(2007年8月)PDF

金融庁資料は「我が国個人金融資産に占める株式・投資信託の構成比は、先進諸外国と比して依然として低い」(7ページ)として、「「貯蓄から投資へ」の流れを一層推進する必要」がある、と断言している。

そして2003年から導入された優遇税制によって、「軽減税率導入の前後で株式・株式投信の保有を増やしているのは高所得者層ではなく中所得者層」として、金持ち優遇ではないことを強調している。(8頁)

株式・株式投資信託の2002年→2006年の伸び率

第一階級(平均年収273万円) 55.3%
第二階級(平均年収413万円) 97.4%←ココ
第三階級(平均年収552万円) 91.0%←ココ
第四階級(平均年収749万円) 36.5%
第五階級(平均年収1241万円) 54.7%

たとえ金融庁の言うように、優遇税制を一番活用しているのが中間層であったとしても、それは単にこれまで貯蓄を蓄えてきた中間層に対して、手数料ビジネスなどに群がる金融機関が「貯蓄するより特ですよ」と上手い話を持ちかけた結果に過ぎない。そしてこの「貯蓄から投資へ」の拡大こそが問題なのである。

「貯蓄から投資へ」という方針は、小泉政権誕生後直後の2001年6月に発表された「骨太の方針」のなかで明記された「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」によって大々的に実行された。預貯金利子の税金は20%に据え置いたまま、株式売却益や株の配当の税金だけは10%に引き下げるなどして、庶民の貯蓄を金融リスク商品に誘導した。郵政民営化によって、郵便局の窓口でもリスク商品が取り扱われ、全国あまねくをモットーとする郵便局ネットワークを通じて全国あまねくリスクがばら撒かれた(この間の金融危機で、郵便局で購入した50万円の投資信託が28万円にまで値を下げている、と嘆く利用者の話を聞いた)。

サブプライムローン関連証券の暴落と国際的な金融機関の相次ぐ破綻などによって「貯蓄から投資へ」のめっきは完全にはがされた。しかしカジノ金融市場をあおった連中は、危機の中で庶民を道ずれに、いや庶民を踏み台にして生き残ろうとしている。

麻生首相の緊急経済対策は、カジノ化した金融市場への反省は全くなく、リスクとペテンと欲望で膨れに膨れた金融市場を規制することもなく、何の恥ずかしげもなく「貯蓄から投資へ」の路線を踏襲し、選挙対策として2兆円ものばらまきを行い、金融機関・大企業を優遇する政策のオンパレードだ。

次回は、同じく「金融・経済の安定化」の対策のなかで挙げられている「自社株買いの緩和」について述べる予定。
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