
「グローバルカジノをシャットダウンしよう!」9/17-21にかけてスウェーデンのメルマで開かれたヨーロッパ社会フォーラムのデモに登場したattacの仲間たち
政府、マスコミを上げての「公的資金注入を!」「日本の経験を伝えよ」の大合唱。
よく恥ずかしげもなくそんなことがいえるよなぁ、と思っていた矢先、「日経新聞」は「なぜ公的資金投入が必要か」「不良資産の処理加速」「日本のケース 利益2.8兆円」の記事が。
あーあ、こんなデタラメまでばらまいて、なりふりかまわずとはこのことか。
10月14日、米政府は7000億ドルの金融安定化資金のうち2500億ドル(25億円)を注入することを発表した。アメリカ財務省によると、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン・チェースにそれぞれ250億ドル、ウェルズ・ファーゴに200億~250億ドル、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスにそれぞれ100億ドル。
これまでにもベアー・スターンズ救済で290億ドル(2兆9000億円)、ファニーメイ、ファニーマック政府系住宅金融二社への資本注入で2000億ドル(20兆円)、保険大手AIGへのつなぎ融資で1228億ドル(12兆2800億円)と、ジャンジャン公的資金をつぎ込んできた。
2008年2月の英国ノーザンロック銀行の国有化をはじめ、ヨーロッパではイギリス政府による金融機関への資本注入枠500億ポンド(8兆5000億円)、ベルギーなどによる金融大手フォルティスの一部国有化で112億ユーロ(1兆5700億円)、ドイツは不動産金融ハイポ・リアル・エステート支援に500億ユーロ(7兆円)など、公的資金注入になだれ込んでいた。金融立国アイスランドは全銀行の全面的国有化にまで事態が深刻化した。10月16日には、スイス政府がUBSに総額60億スイスフラン(約5200億円)の公的資金を注入を発表。
10月15日、G8は「世界経済に関するG8首脳声明」を発表、「最近の決定及び行動を歓迎し、賞賛する」として自己責任と市場原理主義の新自由主義の敗北宣言である巨額の公的資金投入などの政策を追認した。
新自由主義は完全に破綻した。しかしそのツケは民衆に押し付けられようとしている。
公的資金投入はそのひとつである。
公的資金の注入とは、具体的には、注入される銀行の株を政府が購入することである。すなわち政府が株主になる、ということだが、一般的には、議決権のない優先株を購入することになる。優先株購入の資金は、国債の発行で調達される。
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さて、話は冒頭の「日経新聞」の記事に戻る。
「あれ?たしか日本の公的資金投入では10兆円規模の国民負担が出たのでは?なのに2.8兆円の利益とは?」と思って、記事を読んでみた。
何のことはない、それはとても「利益」などとは言えない代物なのである。
「日本はバブル崩壊後の金融危機を封じる過程で、総額46.6兆円の公的資金を投入した」
46.6兆円の投入先は四つに分類できる。
(1)預金者保護:合計18.6兆円。そのうち8.1兆円は金融機関が保険料として負担。のこり10.4兆円は国民負担。
(2)破綻した金融機関などからの資産買取:9.7兆円。そのうち7.1兆円分はすでに回収(=株式売却)して、のこり2.6兆円が今後回収。回収した7.1兆円のうち売却益が1.5兆円あった。
(3)金融機関への資本増強:12.4兆円を注入。そのうち9.2兆円をすでに回収。のこり3.2兆円を今後回収。回収した9.2兆円のうち売却益が1.3兆円あった。
(4)その他:5兆円。記事に記載無し。
日経新聞は売却益の1.5兆円と1.3兆円を足した2.8兆円をもって「日本のケース 利益2.8兆円」という見出しをつけたようだ。
だが、普通に考えるとこの記事から読み取れる「日本のケース」は、国民負担=損失10.4兆円、売却益2.8兆円であり、未回収分も、売却時には利益となるか損失となるかはわらかない。はっきり分かっている分だけを計算しても、2.8-10.4=7.6兆円の損失である。
バブル崩壊の株価がぼろぼろの際に購入した安い株を、この数年間の株価高騰の時期に売却したのだから「利益」が出るのは当たり前。未回収分=体力のない金融機関の株であり、この金融恐慌では、株価が上がることは望めないだろうから、今以上に損失が圧縮される可能性は高くないだろう。事実、政府や日銀は、保有している株式の売却を凍結した。
インターネット上では「利益2.8兆円」だけが一人歩きしているようだが、もうペテン師たちにだまされてはいけない。
バブル崩壊後の公的資金注入の教訓として日本が世界に伝えなければならないことは、バブルは必ず崩壊する、政治家、官僚、やくざ、金持ちはバブルでもうけた、公的資金は庶民の付けに回される、公的資金を投入された巨大金融機関は税金を払わずぼろもうけをしてきた、ということだろう。
麻生居直り自公政権は、いままた公的資金注入を復活させようとしている。「中小企業や地方のため」?「体力の弱い金融機関への支援」? どうしても資金の注入が必要であるなら、公的資金注入で息を吹き返し、税金不払いと低金利で体力を蓄え、サブプライムで事業縮小した欧米系金融機関に変わって国際金融事業を拡大するために、9000億円もの大枚をはたいてモルガンスタンレー株を購入した三菱東京UFJをはじめとする大手金融機関の富をすべて吐き出させて、それにあてるべきである。
必要なところに金を融通する、それが金融の基本である。
あらたな公的資金導入に反対しよう。
金融機関への規制を強化しよう。
国際通貨取引に課税を。
カジノを閉鎖せよ!
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