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食糧危機--福田提案は問題の「解決」ではなく「原因」

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福田首相が食糧サミットでぶちあげた「支援策」を、各紙は一面で大々的に報道した。しかし、「サミットは食料危機解決には役立たない」と鋭い論陣を張っているAMネットの松平尚也さんの論考を読んでから、福田首相の演説を読み返すと、その疑問点・問題点は浮き彫りになる。

食料危機とサミット~日本が世界を飢えさせる~(松平尚也の日記) 

気候変動とバイオエネルギーがもたらす課題」における福田総理演説(6月3日、食糧サミット)
 
以下、福田首相の提案を緊急、中長期、新たな要因に対する対策の三つに分けて、疑問点をつけてみた。
(危機への緊急及び短期の対応)

・本年既に実施済みの8,500万ドルに加え、1億ドルの緊急食糧援助を本年7月までに実施。
・貧困農民に対する食料増産支援として、本年既に約1,000万ドルの実施に加え、さらに約5,000万ドルを早急に実施。
・世銀の世界食糧危機対応プログラムとの連携、国際的な協調の枠組みの下で積極的に貢献していく用意
・日本政府の保有する輸入米のうち、30万トン以上を放出する用意。
・各国が備蓄している食糧を国際市場に放出するよう呼びかける
・仮に、食料市場で投機的な側面、実需から乖離した面があるとすれば、それを監視するという強い政治的意思を示すべき、この政治的意思を担保する何らかのメカニズム構築も検討しなければならない
・農産物の輸出規制等の措置の自粛を呼びかけたい

【疑問点】
食糧増産支援の問題、世銀プログラムとの連携という問題、投機の実態を「仮に」とする慎重な態度の問題など


(中長期的施策)

・日本も国内の農業改革を進め、食料自給率の向上を通じて、世界の食料需給の安定化に貢献できるよう努力。
・途上国の農業生産性、生産能力を向上させる。日本は、農林水産分野における過去5年間のDAC諸国支援総額の約3割を担う第一位の農業支援国。
・TICADIVで、アフリカのコメの生産高を10年間で倍増させる呼びかけ。灌漑等のインフラ整備、品種改良のための研究、栽培技術普及のための人材育成等を積極的に推進。

【疑問点】
日本の農業改革の実態、途上国農業生産向上技術の実態、コメ生産高倍増の中身の問題など


(新たな要因に対する対応)

新たな要因:燃料価格高騰との連動、気候変動、金融市場やエネルギー市場

二つの対応策

・温暖化対策に真剣に取り組む必要あり。同時に、途上国の農業が気候変動に適応していくための取組みが必要。100億ドル規模の新たな資金メカニズム(クールアース・パートナーシップ)を発表した。

・バイオ燃料のために世界の食料安全保障が脅かされることがないよう、原料を食料作物に求めない第二世代のバイオ燃料の研究と実用化を急ぐ。

【疑問点】
100億ドル規模の資金メカニズムの大半が新たな借款、次世代バイオ開発の問題

 + + + + +

以上、福田首相の提案と疑問点をあげてみた。ただ単純に「緊急支援」を提案しただけでなく、新自由主義の流れに沿った食糧危機への対応といえるだろう。

ローマ現地では、ビア・カンペシーナなどが対抗アクションを繰り広げている。

WSF-TV

ほとんどのメディアでも、投機マネーの流入が語られているが、福田首相はそれを「仮に」と極めて慎重な形で触れたに過ぎない。

途上国債務帳消しに取り組むCADTMのウェブサイトに、《Global Famine》と題するMichel Chossudovskyさんの論文が掲載されており、IMF・世銀などによる長期的な市場改革の影響、穀物市場の規制緩和の問題、穀物市場に流入した投機マネーの問題などについて触れている。

Global Famine 

この論文では、「IMF/世銀の『経済療法』は、問題を『解決』するのではなく、問題の『原因』そのものだ」と厳しく指摘している。食糧サミットにおける福田提案も同じく、「解決」ではなく、さらなる「原因」をつくりだすのではないか。

食糧危機も投機マネーも、利益最優先のグローバル資本主義の生き残り政策である新自由主義が作り出したものだ。投機マネーを規制する通貨取引税の導入はattacがこれまでも訴え続けてきたことだ。

東京では、G8サミットのまえの6/28-29と、対抗フォーラム&アクションを予定している。そこでは、脱WTO/FTA草の根キャンペーンのみなさんが分科会「自由貿易が食料危機を招く!!」を開催する。

自由貿易が食料危機を招く!!(6/28)

最後は宣伝になってしまいました。

投機マネーに規制を!
食と農に新自由主義はいらない!
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