アフリカから搾り取れ--TICAD(アフリカ開発会議)が終わって

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アフリカ開発会議(TICAD)が終わって一週間。
「アフリカで儲けよう!」という日本政府の方針が発表されています。

◎「横浜宣言」元気なアフリカを目指して(概要)(全文)(2008年5月30日)
◎TICAD IV 横浜行動計画(骨子)(全文 HTML版PDF版)(別表(PDF))(2008年5月30日)
概要と評価(2008年5月30日)
共同記者会見(2008年5月30日)
◎その他情報はこちらから

これまでは「アフリカ支援の哲学を語り合う場」だったこれまでのTICADですが、今回は、新自由主義に飲み込まれるアフリカからどのように富をぶんどろうか、というのが、今回のさまざまな成果文書からも伺えると思います。

日本政府は、TICADの「成果」を7月洞爺湖サミットへつなげようとしています。

以下は、TICAD初日に行われた福田首相の開幕の演説について、attacのメーリングリストに投稿したものの転載です。

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今日からアフリカ開発会議が横浜で開催されています。
福田首相が演説をしました。

演説全文

演説全体の1/3を「経済成長→民間投資→道路建設」で占める内容です。日本で道路がつくれなくなるかもしれないのでアフリカでつくるのか?という冗談はさておくとして、突っ込みどころ満載です。

「私たちがこれから共に作り上げていく新しいアフリカの歴史とは、成長の歴史であります。成長のためには、平和で安全な社会を前提としたうえで、民間投資がなくてはなりません。投資が経済を伸ばし、それが新たな投資を呼び込んで自律的成長を促すという、戦後の日本と多くのアジア諸国で成功したモデルを、アフリカが我が物とすべき時が訪れました。このときに当たり、日本は、アフリカの人たちとともに肩を並べて歩んでいきたいと思います。」 

「アフリカの成長が勢いを増していくため何より重要なのは、インフラの充実であります。特に交通インフラを整備することが民間投資を呼び込むには非常に大切だということを、日本やアジアの経験は教えてくれております。」

ODAや民間投資による「経済成長」のもとで、どれだけの日本、アジアの人々が苦しめられて、そしていまも苦しんでいるか、という検証を抜きの発言です。日本国内では公害や原発誘致、空港建設、ダム建設などで、どれだけの人びとが苦しんだか、アジアでもODAや民間投資によってコミュニティや自然がどれだけ破壊されてきたか。

道路はアフリカに投資を招き入れるだけでなく、アフリカの資源を略奪するためにも使われるでしょう。道路建設のための円借款は日本にとって必要な資源のある地区に重点的に投下されるでしょう。

なぜか、日本はコメが主食で経験も豊富なので、アフリカのコメ生産量倍増のために農業支援をする、というように、アフリカの食習慣をほったらかしにした自分勝手な「農業支援」についても触れています。おかしくない?

MDGに関しては、ジェンダーや保険の分野として「リプロダクティブ・ヘルス」をあげてはいますが、具体的には、「母子手帳」を普及させると言うことだけのようです。女性の個人としての健康の権利には触れられていません。

感染症対策に対しては2009年以降5.9億ドルを拠出するそうですが、「そんなんじゃ足りないよ!」という批判がNGOからは出されています。

あれやこれやでお金が必要になるので、「日本のアフリカ向けODAを漸次増加し、5年後、2012年までに2倍とすることをお約束します。私は先ほど、インフラ整備を中心にアフリカ向け円借款を40億ドルにすると申し上げました。加えまして、アフリカ向け無償援助・技術協力につきましても、今後5年で倍増することもお約束します。」と、大盤振る舞いを述べたそのすぐあとに、こんなことも言っています。

「以上のような支援とは別でありますが、アフリカの債務問題に対して、国際社会と協調しつつ対応してまいりますのは言うまでもありません。」

これはどういうことでしょうか。「国際社会」とは、アメリカを中心とするG8やIMF・世銀を指すのだと思います。おそらくはアフリカ諸国の首脳にではなく、債務問題を話しあうカネ貸し諸国のパリ・クラブに対して「安心してください。大盤振る舞いをするといっても、皆さんを出し抜いて債務帳消しなどはしませんから」と約束したと考えるのは深読みのしすぎでしょうか。

もちろん、この一言も忘れていません。

「アフリカを含む国際社会の平和の維持に、より効果的な役割が果たせるような国連安保理改革も追求していきたいと思います。」

そして最後に、余計な一言。

「最後になりましたが、私どものアフリカ開発に係わる基本的考え方に触れたいと思います。一言で申し上げれば『自立と共生』です。」

植民地解放闘争などをつうじて独立を果たしたアフリカ諸国の「自立」を打ち砕いてきたのは誰なのか、いまだに債務の鎖にアフリカ諸国をつなぎとめようとしているのは誰なのか。

ンクルマやパドモアの下でブラックアフリカの先陣を切って1957年に独立を勝ち取ったガーナで翌58年に開催された「全アフリカ人民会議」に出席したケニアのトム・ンボヤ、ニャサランド(現マラウィ)のカムズ・バンダ、コンゴのパトリス・ルムンバなどは、アフリカの独立と未来を熱く語り合った。だがかれらの多くが、帝国主義とその傀儡に暗殺されたり祖国を追われたりした。帝国主義のくびきからいまこそ自立すべきであると主張したブルキナファソ大統領・トーマス・サンカラは1987年10月15日に暗殺された。

500年以上にわたるアフリカの「自立」のためのたたかいをつぶしてきたいま、支配する側から言われる「自立と共生」がどれほど空虚で欺瞞的なものであるのか。いまでもアフリカの中で「唯一」他国による軍事支配にある西サハラを無視して、軍事支配をするモロッコ政府をTICADに招聘し続けている日本政府に「自立」も「共生」も語る資格はないでしょう。

5月25日には横浜でTICADの意味を問い、トレバーさんへのビザ発給に関する妨害に抗議してデモと集会が行われました。5月25日は、アフリカの解放のために命を落とした人々を記念するアフリカ解放記念日50周年にあたり、また1963年5月25日アフリカ統一機構設立45周年の日でした。

福田首相の演説を聞きながら、そんなことを考えた一日でした。

会場付近で抗議のチラシまきをされた皆さん、記者会見に参加された皆さんお疲れ様でした。

(参考)
African Liberation Day: the people must prevail
 
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2008/06/30 (Mon) 13:59 | 渡辺卓郎

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2008/06/30 (Mon) 16:23 | 渡辺卓郎