fc2ブログ

中国国有企業再編にタックスヘイブンの影

china__currency.jpg

中国西南部、四川省にある国有企業、四川双馬投資集団有限公司(以下、双馬投資公司)で企業再編=民営化に反対する労働者のストライキ発生のニュースが流れた。

中国国有企業の民営化の過程については、こちらを参照してもらいたいが、今回のケースでも同じ。争議の中身はこちらを参照してもらいたい。ここでは、この争議ニュースの番外編を書いてみたいと思う。

なぜわざわざ懲りずに「番外編」なのかというと、この企業再編にタックスヘイブンがかかわっているからだ。中国とタックスヘイブンについては、以前にこのBlogでも取り上げた(こちら)が、それが具体的な事例として、リアルな抵抗として情報が伝えられたことを、記録に残しておこうと思い、この「番外編」を書いておこうと思った。
双馬投資公司は国有持ち株会社で、綿陽市国有資産監督管理委員会が89.72%の株式を保有している(ちなみに残り10.28%の株式は双馬集団の労働組合が持っているので「労働者にも所有権がある」という…)。

この企業の前身は1956年に建設された四川省江油セメント工場で、第一次五カ年計画の際には、重点建設プロジェクトの一つとして、ドイツからプラントを輸入し、当時アジアの三大セメント工場の一つという、人民中国の輝ける社会主義建設の星だった。双馬投資は、1998年に四川双馬セメント有限公司を設立、双馬セメントは翌98年に深セン証券取引所に株式を上場している。株式の66.5%を双馬投資公司が保有している。

実は、この企業再編、外資の乗っ取りですすんだ。乗っ取りは「ラファージュ中国オフショアホールディング」というペーパーカンパニーを通じて行われた。

名前からしてぷんぷん胡散臭いラファージュ中国オフショアホールディング、ご想像の通り、タックスヘイブンのバージン諸島に会社登録している。持ち株会社(親会社)のラファージュ瑞安は、セメント世界最大手のフランス資本、ラファージュと香港資本の瑞安グループの傘下企業の瑞安建業の合弁会社で、北京に拠点をおいている。

双馬投資公司は、全株式を「ラファージュ中国オフショアホールディング」に3800万ドルで売却して、企業再編を進めようとした。

企業再編の計画が進められたのは2005年11月から。2007年7月13日には政府関連部門によって合併が承認された。

労働者たちは、まさに合併が承認されようとする直前にストライキで立ち上がった。

先日、このブログでも紹介した『タックスヘイブン』でも「中国への投資の一位と二位はタックスヘイブンである」(37頁)と紹介されている。一位の香港と二位のバージン諸島、今回の民営化はそのどちらにも関係のある外資が介在している。

「これなくしては現代の経済的グローバリゼーションは機能しないであろう、支柱の一つ」(同書12頁)といわれるタックスヘイブン。19世と21世紀の資本主義が同時進行で進む中国のグローバリゼーションにとっても欠かすことのできないシステムとしてタックスヘイブンが暴れまわっている。

万国の資本家はタックスヘイブンを通じて団結している。
万国の労働者はいかに団結するのか。


-------(以下、関連報道)-----------


四川双馬を買収 セメント最大手ラファージュ

    〔北京2005年11月15日発新華社=中国通信〕中国最大のセメント合弁企業、ラファージュ瑞安セメント有限公司は15日北京で、約3800万ドルで中国の上場企業、四川双馬投資集団の全株式を取得した、と発表した。四川双馬の債務を清算するための資金と既存の生産設備を改良する事業に投入する資金を加えると、ラファージュ瑞安セメントが投入する資金は約1億6000万ドル。
  セメント世界最大手ラファージュが中国の資本市場に進出するのは初めて。
  関係者は「今回の買収により、四川の省都・成都におけるラファージュ瑞安セメントの地位は強化された」と指摘している。成都市場のセメントは現在、都江堰ラファージュセメント有限公司が提供している。同社の年間生産能力は2006年までに倍増し、280万トンに増える。双馬の買収により、綿陽に近い四川省北部のセメント工場と宜賓に近い南部の2つのセメント工場がラファージュの傘下に入った。
  ラファージュ瑞安セメントの四川省における生産能力は年間230万トンで、年末までに560万トンに増える。都江堰ラファージュセメントの2号生産ラインが年末に完成すると、ラファージュ系企業の四川における生産能力は700万トンに達する。
  今回の買収により、ラファージュ瑞安セメントの中国における生産能力は年間2100万トンに増え、中国の3大セメント業者として地位が強化される。
  ラファージュ瑞安セメントの株式は、ラファージュが全体の55%を、瑞安建業が45%を保有している。ラファージュ瑞安セメントの会長は瑞安建業の羅康瑞社長で、ラファージュが同社を管理しており、華顧思氏を最高経営責任者(CEO)に任命した。
  四川双馬投資集団が過半出資している双馬セメント有限公司は、深セン(土へんに川)証券取引所に上場されている。
  ラファージュは世界最大級の建材企業で、昨年の売上高は144億ユーロ。中国に進出したのは1994年。
  瑞安建業有限公司は瑞安集団の子会社で、1997年に香港で株式を上場した。香港と中国本土で建築・建材業務に従事している。また、瑞安地産有限公司の20%余りの株式を保有している。
スポンサーサイト



Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する