
国際決済銀行(BIS)は、三年ごとに世界の外国為替およびデリバディブの取引額を調査し、発表している。
先日、2007年4月の一営業日あたりの取引額が発表された。54カ国・地域、約1300の金融機関等を対象に調査が行われた。
その額なんと5兆3000億ドル。たった1日の金額である。内訳は外為3兆2100億ドル、デリバディブ2兆900億ドルである。2004年4月の調査では、3兆1000億ドル(外為1兆8800億ドル、デリバディブ1兆2200億ドル)だったことから、外為市場の膨張は留まるところを知らないかのようである。
○ 国際決済銀行による発表
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ちなみに、モノやサービスの貿易は、2006年一年間で11 兆8,742 億ドル(ジェトロ推計)。若干時期のずれはあるが、外為とデリバディブの取引額のおよそ3日分で、世界の一年間のモノとサービスの貿易額をはるかに上回ってしまうのだ。
仮に外為取引がウィークデーのみに行われていたとすると、一年で約250営業日。単純に計算すると、一年間で
5.3兆ドル×250日=1,325兆ドル
1,325兆ドル÷11.9兆ドル=111
ということで、07年には、なんと06年のモノとサービスの貿易額の約111年分もの外為&デリバディブ取引が行われたことになる。
(この項は2008年1月31日に追加)
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外為取引のうち、9割は貿易取引や企業買収などに関係のない投機為替である。最近では、企業買収といっても株価値上がりで売り抜ける投機的買収も多いことから、投機マネーの割合はぐっと高くなると予測される。
外為市場最大のプレーヤーである各国の中央銀行も調査対象であり、取引高には急激な為替変動への介入なども含まれているが、全体として、膨れに膨れ上がり不安定化する国際金融体制がその背景にある。
ふつうは「そんな不安定なら、もっと安定するように厳しく規制すればいいのに・・・」と思うのだが、投機マネーの世界では、その「不安定」こそが儲けを生み出す「錬金術」のタネなのである。そして世界の圧倒的多数の人々はこのような「錬金術」からはなんら利益を得ることができないが、「錬金術」が引き起こす不安定化が、地球の裏側にまで波及し、人びとの生活を破綻に追い込んできたことは、80年代から世界各地で再現されてきた。
そこで、ふと思い出したのが、途上国の抱える債務の問題だ。
世銀の発表によると2004年の途上国の債務残高は2兆7557億ドル。この額は、2007年4月の外為取引上位五カ国(英、米、スイス、日本、シンガポール)を単純に足した額2兆7340億ドルに相当する。
サブプラショックでは、米シティグループなど大手3行が、共同で最大1000億ドル(約11兆5000億円)規模の投資基金を設立し、危機に陥っている投資会社(大手銀行が設立した)を救済するという。
途上国政府は、毎年2400億ドルの債務を返済している。これは2015年までに貧困半減を謳った国連ミレニアム目標(MDGs)達成のために必要な額の3倍に等しいという。
アメリカの01~07年度の対テロ戦費は総額5610億ドル。08年度予算要求は1964億ドル。この額は、
世界銀行が発表した2005年の一人当たりのGDPの下位34カ国(※)のGDP合計1952億ドルを上回るものである(世界183カ国のGDP合計は約43兆8350億ドル)。
カネの問題ではない。だが、これほどデタラメなマネーの氾濫を目の当たりにして、おかしいと思わないほうがおかしい。そのカネに翻弄される人びととともに、おカネ最優先の社会のあり方を変革したいとも思う。
途上国の債務と貧困は、投機マネーと戦争でしか「成長」を維持できないグローバル資本主義の一面だ。そしてカネ余りの豊かな国々のなかでも貧困と格差が拡大し、伝統的産業が破壊され、差別と抑圧が人びとを襲っている。
投機マネーに課税を!
戦争も搾取もない、もう一つの世界を!
※34カ国とは、ハイチ、ガーナ、ラオス、キルギス、バングラデシュ、ブルキナファソ、カンボジア、マリ、サントメプリンシペ、トーゴ、東チモール、タジキスタン、中央アフリカ、モザンビーク、タンザニア、ガンビア、ウガンダ、ソマリア、ギニア、マダガスカル、ネパール、ジンバブエ、ニジェール、ルワンダ、アフガニスタン、エリトリア、シエラレオネ、ギニアビサウ、リベリア、マラウイ、エチオピア、ビルマ、コンゴ民主共和国、ブルンジ。
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